残間 あなた満身創痍だけど、ちゃんと全部乗り越えてるわね。
吉永 それほどでもないよ。年相応にガタはきてる。あなたもいつもどこかつらそうだったけれどね。
残間 喘息、心筋性関節リウマチ、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などなど。中学生の時に3ヵ月くらい、リウマチから心臓弁膜症になって入院したこともあるの。今も指の関節が痛いんだけど、これはブシャール結節とへバーデン結節。痛いのはつらいよね……って、今日の対談のテーマは「『ご機嫌力』をつけよう」じゃなかった?
吉永 どうやら私たちは、ご機嫌に生きている人代表として呼ばれたようですな。長いこと生きてこられてありがたいとは思ってるけどね。
残間 そんなに「ご機嫌」ってわけでもなくて、放っておいたら不機嫌になる。年のせいなのかしら?どんどん自分が老朽化していくのを実感するのは恐怖よね。
私の母は99歳で亡くなったのだけど、80歳を超えてからほうれい線を取る整形手術をしたいと言い出して、当時は何を言っているのかと呆れていたの。でも今はなんとなくわかるのよ。この年齢になって初めてわかることがあるというのは、人としての成長かもしれないと思えば、年を重ねるのも悪くないかな。
吉永 見方を変えれば、心が穏やかになることはあるよね。幸せか不幸せかは捉え方次第だと思う。嬉しい出来事に焦点を当てて感謝できる人は幸せな人生だし、不幸な出来事を拡大鏡で眺めている人は不満だらけになってしまうのかもね。
残間 とはいえ自分の心をコントロールするのは簡単じゃない。特に親しい人との死別はキツいわ。実は私、ここ2年ほど鬱々としていたの。コロナ下に同世代の知人がたくさん逝ってしまって。
吉永 寂しいよね。
残間 もしかしたら次は自分かもとか思うじゃない?
吉永 毎朝、目覚めると「ああ、今日も生きてる」とか思うもんね。でも、それが毎日を丁寧に暮らそうという気持ちにつながっているかもしれない。
残間 今年は能登半島地震で始まり、被災された方々の気持ちを考えると、とてもいたたまれなかった。
吉永 あのニュースを見ながら、他人事じゃないなと感じたわ。自分はもう完全に逃げ遅れる側の弱者なんだ、と気づいてハッとして。だって津波警報が出ても、最早、坂道を駆け上れないんだから。
残間 同じことを思ってた。阪神・淡路大震災のときは44歳で、東日本大震災のときは60歳だったかな?とにかく自分のことは自分で、という認識だったけど……。能登半島地震でお亡くなりになった方のなかに70代が多かったと知って、さぞかし無念だろうなと胸が痛くなったわ。