今も生きる勝新太郎師匠の教え
上京して真っ先に向かったのは、石原裕次郎さんのご自宅でした。今では信じられないことですが、昔は著名人の住所が週刊誌で公開されていたのです。それを見て伺ったものの、裕次郎さんには会えず。出て来た方に「石原プロに入りたいのですが」と直訴したところ、「会社に電話してください」。
それならばと石原プロに連絡をするも、「今、役者の募集はしていません」と門前払いされてしまって。考えたあげく、新聞広告の募集で見つけた俳優養成所に入所することにしました。
勝新太郎師匠に出会ったのは4年後、私が21歳の時です。その後、勝プロダクションに入り、師匠の付き人をすることになりました。そして、師匠主演のドラマ『座頭市物語』でデビュー。翌年には、ドラマ『人間の條件』で初の主役を演じました。
師匠からはたくさんのことを学びました。ある時、言われたことがあるんです。「お前は矢だ。俺が放ってやるからどこまでも飛んでいけ。頑張るのをやめたら矢は地面に落ちるが、努力を忘れなければいつまでも飛び続けられる」と。それは今でも私の座右の銘になっています。
とにかく言動のすべてが豪快で、こうした公の場で披露できるエピソードがあまりないのが残念なのですが(笑)、本当に人を驚かせ、楽しませることが大好きな人でした。師匠のその精神は、今の私の舞台にも生きていると思います。