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今さら離婚はできない。かといって四六時中一緒の生活は窮屈すぎる。悪戦苦闘の末、快適な距離を見いだした夫婦の暮らしとは──尚子さん(仮名)の場合、夫とは生活リズムが合わず…(取材・文=上田恵子)

平和に過ごせるよう、夫婦のテリトリーを分けて

さらに、夫が定年になる前から、今後に備えた生活を送っているツワモノもいる。食品工場でパートをしている尚子さん(54歳)だ。住宅関係の会社に勤める尚子さんの夫は58歳。13年前に購入した3LDKのマンションで、出版社勤務の23歳の娘と3人で暮らしている。

「家庭内別居を始めた理由はいろいろありますが、決め手になったのは騒音問題。夫は4~5時間眠れば十分という体質で、意味もなく毎朝4時半に起床するのですが、支度をする際に立てる物音がとにかくうるさいのです。8時間は眠りたい私は、ろくに寝ていられず朝からイライラ。

このままじゃ夫が定年を迎えたら、一日中いがみ合って暮らすはめになることは目に見えています。そこで彼に『お互いが平和に過ごせるよう、夫婦のテリトリーを分けよう』と提案。5年前から現在のスタイルで生活するようになりました」

尚子さん家族が住むマンションは、中央にキッチンやお風呂などの水回りが集中し、南北両端にベランダが設置されているタイプ。夫の騒音問題をきっかけに夫婦で話し合い、北側の2部屋を尚子さんと娘の、南側を夫のスペースにすることを決めたという。

「生活スペースを分けたことで、ドアを閉めてしまえばほとんど物音は聞こえなくなりました。また、彼は起きてすぐにご飯を食べたい人なうえ、食の好みが私や娘とは合わないので、食事の支度は自分でしてもらうことに。朝から肉と野菜の炒め物など、コッテリしたものを作っていますよ(笑)。結婚するまで独り暮らしをしていた人なので、苦にならないようです」