問題は、仕事量が多すぎること

問題は、仕事量が多すぎること。持ち帰り仕事も休日出勤も日常茶飯事。就業規則では週休2日の決まりですが、週に1日休めるかどうか。従業員に取らせることが法律で義務づけられている「年5日の年次有給休暇」も、上司に取れと言われますが、実際には休暇期間中も働いています。残業も、労働基準法的には違反ですが、「パソコンの電源を切り忘れた」という言い訳で、法定時間以上、しています。実際の稼働時間は過労死水準を超えているでしょう。あまりの忙しさとノルマのプレッシャーで、この10年ほど、篤子さんは辞めたい、辞めたい、と言い続けています。

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7、8年前には、篤子さんは思いあまって転職活動をしました。でも、面接に行った会社で、「今の会社の方が条件が良いと思いますよ」と止められました。業界全体が忙しいようです。他社に移っても忙しさは変わらず、むしろ給料は下がるかもしれません。収入は減って仕事が忙しいままなら、今の会社で我慢するほうがいいかと、結局、転職はしませんでした。

数年前までは、更年期障害で大変でした。考えがまとまらずぼーっとしてしまったり、以前はこなせたマルチタスクが出来なくてシングルタスクになったり。体調も悪く、気持ち的にもつらかったです。その後、最悪の状態は脱しましたが、最近は年を取った分、体力的にきついと感じます。

「せめてノルマがない部署なら良いのに。それか、仕事量を減らしてくれるか」。でも業績悪化の折、会社にスタッフを増員する予定はなさそうです。定年延長後に、給料は減っても仕事量を軽くする働き方が選べるならば、65歳まで今の会社で働くことも考えられるのですが。会社は若い社員の育休取得促進には力を入れているのに、彼ら彼女らの抜けた間の人員補充はありません。ベテラン社員には厳しいと感じます。

「でもね、お客さんの図面を描いてる時は楽しいの」と、篤子さんは図面を引く仕草をします。根っから建築が好きなのでしょう。

帰宅は連日23時、24時なので料理はしません。「ちゃんとしたご飯はほとんど食べてない」。最寄り駅近くにある深夜営業のスーパーで、帰宅途中に惣菜を買って来ます。ご飯を作る時間も気力もないのです。