東京に住み続けるほうが魅力的
一方で、日々の楽しみでいうと、東京のほうが断然、魅力的です。篤子さんの友だちはほとんどが東京にいます。この数年、篤子さんは絵を習っています。アーティストになるつもりはまったくなく、趣味です。でも、仲間たちと集まる時間が楽しいのです。
娯楽面でも、東京のほうが遥かに楽しめます。好きなバンドのコンサートやライブも、北陸には来ません。美術展も、東京ほどバリエーションも数もありません。自分だけの生活を考えるなら、東京に住み続けるほうが魅力的です。
仕事をどうするか、という問題もあります。いまの会社は在宅ワークは認められていないので、Uターンするなら退職するしかありません。「定年退職したら、しばらく失業保険が出ますよね」。失業給付は1年近く出るはずです。それでも、まだ60歳前で一級建築士の資格があっても、地方で転職先を見つけるのは難しいだろう、と篤子さんは予想します。スキルを生かして、CADオペレーターとかのバイトでもいい。建築系で、フルタイムでなくパートタイムで仕事があればいいのに、とも話します。職種や働き方のバリエーションで考えると、やはり東京の方が可能性はありそうです。
なにより、篤子さんの自宅マンションは持ち家なのです。2010年に新築で、「売れ残っていた」部屋を購入しました。東京23区内、山手線の内側、地下鉄駅徒歩3分、10階建ての3階部分、東向き1LDK42平米の物件です。「通勤が楽だから、絶対都心が良い。帰省するのに、羽田空港も東京駅もアクセスが良い」と選びました。
住宅ローンも借りましたが、返済は月6万5000円程度。管理費等を含めても住居費は月々10万円もしません。ローンも、残債はあと1000万円もなく、退職金で完済できるはず。立地が良いので、賃貸に出してもそこそこの金額で貸せるでしょう。売るにしても「今でも、買った時の値段で売れる」ので、手元にまとまったお金が残るでしょう。
もし、いま会社を辞めてUターンするとしたら、この自宅は人に貸すのでしょうか。貸すならリフォームが必要でしょう。でも確定申告が面倒なので、売っちゃうような気もします。逆に、もし会社に定年までいるなら、あと1年半あります。その間に、もしも、母に万一のことがあれば、実家に戻る理由がなくなります。ならば東京に住み続けるでしょう。天井カセット式エアコンや給湯器は15年程度で交換したほうがいいので、自分が住み続ける場合でも、リフォームが必要です。その費用くらいは、ローンを借りなくても預貯金で出せますが。
「お金はあると使っちゃうの。何に使ったか分からない~」と言う割には、篤子さんは、きちんと投資を続け、お金を貯めています。毎月、合計10万円を積立NISAなど、投資に回しています。会社でiDeCoもやっています(選択の余地なく、全社員がやらされているそうですが)。生命保険も入っていて、終身生命保険はすでに払い済みです。老後に受け取れる個人年金も何本か掛けています。個人年金が何歳からいくらもらえるかも把握していないし、投資信託がどのくらいに増えているのかも全然確認していませんが。