ロフトにある書斎には穏やかな光が降りそそぐ(写真提供:麻生圭子さん)

グレイヘアのショートに、ジーンズにワークブーツが日々のファッション。京都時代の私を知る人はびっくりするでしょうね。古い町家に住んで、着物を着て、お茶の稽古に通ったり、京の伝統を訪ねたりする日々だったのですから。18年間京都に住んで、日本のよきもの、歴史や文化を学ぶことができました。何冊か本も書かせてもらいました。

でも、そろそろ次に進みたい、京都を整理したい、そう思っていたときに、夫がロンドンで仕事をすることになりました。人生をリノベーションできる。

渡英を前に、ほとんどの家財道具を処分。小さなものはフリーマーケット、大きなものは友達の骨董屋さんに頼んで、オークションで売却してもらいました。

私、けっこう潔いんです。失っても、記憶は残る。それでいいじゃない、と思うんです。父が転勤族で、引っ越しが多かったからかもしれません。荷物を処分するの、子どものころから得意なんです。おとなになってからのルールは、3年間、一度も必要がなくて、美しいと思えないものは、高価なものでも処分する。勿体ないとは思いません。誰かに有効に使ってもらったほうがモノも喜ぶ。使ってこそのモノの価値。

それに荷物が減ると、私の場合は心が軽くなる、解放されるんです。そしてモノが少ないほうが、インテリアはセンスよく見える。心のセンサーも鋭くなる。