都会のゴミはハードだった
どんな徳を積もうかと考えて、まずは賢者(前述の大谷くん)を真似てゴミ拾いをすることにした。昨年からややサボりつつも、1日7000歩のウォーキングを地味に続けている。公園以外の道路にはゴミが落ちているはずだ。
ビニール袋とトングを持ち、ウォーキングへ出かけた。
(うわ……ひっど……)
今までその辺のゴミを意識して歩いていなかったせいなのか、都会のゴミは想像以上にハードだった。紙クズレベルではなく、コンビニ弁当のケース、食べかけのパン、ペットボトルにIQOSの吸い殻……。ここは明け方の新宿歌舞伎町や、センター街ではなく、東京都内の静かな住宅街のはずなのに、公道がゴミ箱のようになっている。
細かなゴミだけではなく、堂々と家具も捨ててある。数百円を支払えば粗大ゴミは回収してくれるのに、なぜその行為を怠るのだろうか。下方を向いて歩くだけで気分は落ち込んだ。それでも『積立NEESAN』の精神を思い出して、いくつかはトングで拾って帰宅する。
なんだかやるせない気持ちになったので、都会のハードゴミ事件のことを地元の静岡県浜松市の友人に電話で話をした。友人もウォーキングをしているという。私からの話を聞いて「頑張って拾うわ!」と息巻いていた。後日、友人から連絡があった。
「あのさあ、地元にゴミなんて落ちてんかったわ。道路がすんごいきれいで、拾うゴミがなかった」
そう、地元は一軒家が並んでおり、強制参加の町内会の掃除制度もある。私の住んでいた町は年々、高齢化が進んでおり、日中働いていない老人たちが積極的に掃除をする光景をよく見る。持ち家の周辺を汚したくない気持ちもあるのだろう。
きっと地元の諸先輩方は自然に『積立NEESAN』を遂行している。私たちのように年金が支払われないかもしれない恐怖に怯えることもなく、(人によるけれど)豊かな老後を過ごせているのだと思うと、これは尊敬に値する。
(やっぱり田舎は老後に住むか、二拠点生活かなあ)
当初は老後への不安から『積立NISA』について考えていたはず。それがいつの間にか徳を積む精神に内容がすり替わり、地方移住まで結論が行き着いた。これだからおばさんはやめられない。