『よかれと思ってやったのに 男たちの「失敗学」入門』著◎清田隆之

 

例が豊富で、分析もお見事。女にとっても読みごたえあり

オジサンはみんな教えたがりでうんちくを傾けまくるのが迷惑だし、不潔で臭くてデリカシーがない。オジサンが近くに寄ってくるだけでイヤ。

というような話を、最近はよく聞く。しかしわたしは気になるのだ。これって男に対するヘイトスピーチでは? 男が「女は世話焼きで、他人の食生活にまで口を出したがる」「女はみんな、おごられるのが大好き」などと言ったら腹が立つでしょう。女も「男はみんなこうだ」と乱暴にまとめてはいけない。女だけの場で、女同士が仲良くするために男を悪役にするのかもしれないが、それでは男のホモソーシャル(男だけが仲間になれる仲良しごっこ)のまねっこではないか。

不毛な意趣返しはもうやめて、価値観や常識の違いをこまかく観察して擦り合わせるほうにシフトチェンジしたい。いまのところこの本がわたしのイチ推しです。男が女に対してやりがちなNG行為(相手の都合を無視したサプライズなど)、女をイラつかせる無責任発言などの例が豊富で、その分析もお見事である。これは女の気持ちを男に向かって翻訳・解説する本だが、女のわたしにとっても読みごたえがあり、しかも「よく言った」という爽快感がある。

謝罪ができない男、タオルや靴下の置き場所を覚えない男、ワルぶってカッコいいつもりの男、すぐ不機嫌になる男。そうした困ったちゃんたちの中にある、ラクをする本能、それを正当化する思考回路、都合の悪い事実を認知しないスクリーン機能。それらをまずは「やらかしている当人」に認識させ、一緒にいる女が何をがまんしているかを解説する。いくつかのテーマを、学者との対談で掘り下げているのもいい。

 

『よかれと思ってやったのに 男たちの「失敗学」入門』
著◎清田隆之
晶文社 1400円