物価上昇の根本的な原因

生島 ボーダレスの逆を行く流れになってきているんですね。

岩本 はい。そうなると、国境を越えるのに関税がかかります。輸送コストもアップします。以前の30年のような経済がグローバル化し、安さが求められ、実際に値段が安くなった時代とは大きく変わって、価格が上がりやすいフェーズに入ったという見方もできませんか?

『日本経済 本当はどうなってる?』(著:生島ヒロシ・岩本さゆみ/青春出版社)

生島 経済トレンドの潮目が変わったのですね。

岩本 その可能性があるように思います。その上で、目先の世界的な急激な物価上昇のピークは2022年で、2023年に入ってからは落ち着きを取り戻しつつある、という状況が見受けられます(下図表)。

<『日本経済 本当はどうなってる?』より>

生島 なぜこんなに物価が上がっているのか、その根本的な原因は何なんでしょうか?

岩本 すでに多くの指摘がありますが、日本の場合は円安とエネルギーコストの上昇など複合的な要因が、日銀の金融政策とも相まって、という状況があったと思います。

まずは新型コロナウイルスの感染拡大によりモノやサービスの提供が滞ったところに、感染症の終息とともに世界中で一気に需要が噴出し、供給が追い付かなくなってしまいました。そこにロシアによるウクライナ侵略があり、世界的な供給危機から、穀物のほか、原油やLNG(液化天然ガス)といったエネルギー資源などの国際価格が大きく上昇、食糧やエネルギーの多くを輸入に頼る日本では、それがモノの値段にも跳ね返ることになりました。

さらに、足元のインフレ懸念から主要各国は急激な政策金利の引き上げを実施しましたが、日本だけはマイナス金利を継続したことで各国との金利差から円売りが発生、円安で輸入物価がさらに上昇することになりました。