アーティストには助成金や補助がある
史子さんが初めて欧州に滞在したのは2000年代初頭。1年間留学して、いったん帰国。数年は日本で過ごしましたが、一匹オオカミな史子さん。日本にうまくなじめず、再び欧州へ。以来、今の国で暮らしています。
アートへの理解とリスペクトが日本よりずっと高い欧州では、国籍に関係なく、アーティストには助成金や補助があります。例えば史子さんのいる国では、アトリエを公的機関がアーティストに提供していて、史子さんは、自宅の他にアトリエも借りています。公的な運営のため、収入の少ないアーティストの家賃は低く、売れているアーティストは倍以上のアトリエ代を払う仕組みだそう。
「来た当初、こっちは社会保障が手厚いなあ、と思った」と史子さん。公営住宅だけでなく、国による住宅手当もあります。年齢に関係なく誰でも申請できて、一律で家賃補助が受けられます。史子さんの友人の実例では、家賃270ユーロ(約4万6000円)の部屋に対して、家賃手当は月20~30ユーロ(約3300~5000円)とのこと。金額が微々たるものとはいえ、補助はありがたいです。
日本と違って、社会保障は産業別です。史子さんは当初、芸術家向けの社会保険に入っていました。当地の公的年金にも加入しています。日本同様、納付額は年収によりますが、受給資格は日本より短く、5年以上納付したら必ずもらえるそう。日本同様、年金の受給開始年齢は延びており、いまの年金受給開始年齢は67歳。先日、調べたところ、史子さんも9年後から受け取れると分かりました。
ただ、今の国で、将来史子さんがもらえる年金は月に1万5000円程度。日本の国民年金は少ないと言われますが、それでも6万円超ですから、4倍以上です。「日本の年金も全然あてにならないみたいだけど、将来、こっちで暮らすのは考えられないかなあ」