中村さんの実母はまだ存命だ。いずれ夫と同じ合祀墓に入ることに納得していると思っていた。しかし何かの折に、「本当は実家のお墓に入りたかった」と妹にこぼしたそうだ。

「母が生まれたのは石川県の村で、生家のお墓もその地にあります。ただ母は他家に嫁いだわけですから、檀家ではありません。お寺の制度的に、そのお墓に入るのは難しい。それに母方の先祖は人数が多かったため、もういっぱいで入る場所がないのです」

母の気持ちを知ると心苦しいが、仕方ない。墓地管理の当事者でもある中村さんは、そもそも日本のお墓の伝統とはなんなのか、自分なりに調べてみた。

「1つの家庭で1つお墓を持つようになったのは、せいぜい明治時代以降なんですよ。自分でお墓を持てるようになった結果、思い入れも強くなってきた。その思い入れのために、墓じまい──正式には『閉眼(へいげん)』と言いますが──に対して罪悪感を抱く方もいるようですね。

でも、この先、お寺にとっても個人にとってもいいお墓とは何かと考えた時、やはりお寺が永代供養墓を設けるのは時代の必然なのでしょうね……」