がんとうまくつきあう「3つの“あ”」とは?

桜井 山崎さんは、バレーボールをやってるんですよね。けっこう激しい運動でしょう?

山崎 じつは脱毛中も試合に出てました。最後の最後に、私のところにボールが飛んできたので必死に突っ込んだら、被っていた帽子がポロッと。私の肌色の頭を見た主審は慌ててしまい……。ホイッスルもなく試合が終わったことがありました(笑)。あれは申し訳なかった。

桜井 あははは。「日陰者」感ゼロだ。

山崎 球技って、余計なことを考える暇がないじゃない。一瞬たりともボールから目を離せない緊張感で、頭がリフレッシュするんです。以前はただ走ったり泳いだりしてみたこともあったけど、それだと仕事のことが頭から離れなくて。

桜井 私はずっと水泳やランニングをしているのですが、その最中に、「家に帰ったらあれやって、これやって」って頭のなかが整理できるのが、自分に合っているんですよ。

勝俣 スポーツはいいですね。がんになると、引きこもってしまう人も多い。これも抗がん剤に対する偏見で、マスクをしろとか、人混みに出るな、とか。

桜井 「ダメダメリスト」が多すぎる。修行じゃないんだから。

勝俣 食事制限をする人もいるのですが、そうなると一日中がんのことが頭から離れなくなりますよね。「がんから逃れるにはどうしたらいいのか?」という答えのない問いに悶々として、引きこもることになる。いいことは一つもありません。

山崎 悶々とすることでがんが消えるのなら、喜んで悶々とするけれど。私はがんになってから、現実しか見ないように心がけています。ちゃんと仕事ができて、ご飯も食べられているじゃない、って。

桜井 何かが起きたら、そのときに考えればいいんだよね。

山崎 妄想の世界でどんどん穴を掘っていくほうが私は怖い。マイナスの感情を持つことは止められないけど、その時間はなるべく短く。手離れよく。

桜井 「あ、いま悪いことが頭に浮かんだぞ。いかん、いかん」って思うようにしてる(笑)。結局、自分らしく、そのままでいいんだと思う。性格は生まれつきのものだから、がんになったからって無理して変えようとしても、ストレスになるだけ。

勝俣 がんとうまくつき合っていくための秘訣は「3つの“あ”」です、といつも患者さんには話すんですよ。「焦らず」「慌てず」「諦めず」。

桜井 なるほど、そうですね。

勝俣 そうしたら、「焦らず」「慌てず」「ありがとう」と言った患者さんがいました。感謝というのは、さきほどのPTGにつながるのかもしれませんが、いい言葉ですよね。とにかく、がんになったからといって、以前と生活スタイルを変える必要はありませんよ。

山崎 食べたいものを食べて。

桜井 行きたいところに旅行に行ったり、やりたかったことを趣味にしたり。自分へのご褒美を増やすくらいで、ちょうどいいんじゃないかな。

山崎 で、がんなのだからと甘やかしてくれる人がいたら、とことん甘える(笑)。それも秘訣です。