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家事を助けてくれる、ありがたいサービスやノウハウ。忙しい時には利用する人も多いだろう。その一方で、心のどこかでうしろめたさを感じてしまうという人も。罪悪感のもとを探ってみると、人それぞれ異なるようで──(取材・文=玉居子泰子)

「子育てを優先してほしい」という夫

3歳と8ヵ月の2人の男児を育てる佐藤ゆかりさん(43歳)は、勉強や仕事を通じて自己実現をしてきたタイプだ。大学進学で上京し一人暮らしをしながら、勉強に精を出し、念願のデザインの仕事についた。家のことは自分が困らない程度にこなせば十分だった。だがそんな状況は子どもが生まれてガラリと変わる。

「夫は、好きなことを頑張る私を応援してくれる人。でも、子どもができると、『子育てを優先してほしい』と言うようになりました」

子どもたちは数年間の不妊治療の末に授かった。治療中に仕事を大幅に減らしたゆかりさんが、自然と家事のすべてを担うことになった。

「やっと授かった命を大切に育てたいという思いは私も同じです。でもずっと家にいて、幼い息子たちの世話に追われる毎日。家事の時間を減らして、自分の時間を捻出したいとつい考えてしまう」

経営者の夫は多忙で、帰宅は遅い。長男も次男もしょっちゅう風邪をこじらせ、病院に走る。家は片づかず、洗濯物はたまる。不慣れな料理や離乳食作りには時間がかかってしまう。

「外食デリバリーを利用したこともあります。でもやっぱり濃い味付けや栄養面が気になる。夫から『最近、宅配が多いね』などと何気なく言われると、責められているように感じて。私はなんてダメなの……と思ってしまうんです」

周囲の母親はもっときちんとやっているのではないかと、つい自分と他人を比べてもしまう。

「実際に、ママ友たちがどれくらい完璧に家事をしているかはわかりません。でもフルタイムで働きながら、お弁当を手作りしている人もいる。自分は今、少ししか仕事をしていないのになぜ、と」

ゆかりさんの両親は一家で商売を営み、祖父母や親戚と一緒に子どもたちを育てた。ほとんど休みはなかったが、自宅のそばの事務所で一生懸命働く明るい両親。家事は祖母を中心に、いとこやきょうだいたちもワイワイと手伝った。理想だった。

だが今の彼女は、都内のタワーマンションに住み、近所との行き来もあまりなく、遠方に住む両親に頼ることもできない。