「夫も、今の状態が良くないとは思っていて、一緒に妥協点を探っています。最近、カット済みの食材を購入して手軽に調理できる宅配キットを利用しはじめました。でも夫のお金で解決することにも、ひけめを感じる。自分で稼いだお金なら、家事代行などのサービスも、もっと気軽に頼めるのかもしれません」

本当は、自分の力を発揮して働きたい。原点に気づいたゆかりさんは、子どもたちを保育園に預けて、仕事を本格的に再開しようとしている。

「多分罪悪感のもとにあるのは自尊心の低下ですね。もう一度、得意なことで自己肯定感を取りもどせたら、きっといろんなことが変わるような気がしています」

 

家事より仕事が得意な女性がいてもいい

ゆかりさんが言うように、自分で稼いだお金であれば、気兼ねなく家事を外注できるものなのだろうか。

正社員としてマーケティングの仕事を続ける稲葉理恵さん(41歳)は、現在2人目の育休中だ。

週1回、3日分ほどの料理の作り置きを家事代行業者に頼み、年に2度はプロに水回りの掃除を任せる。

「1人目の育休中に復帰後をシミュレーションして、無理のない方法を探そうと、家事代行利用に踏み切りました。担当者がとても良い方で、子どもも懐いてくれ、4年以上ずっと同じ人に頼んでいます。栄養を考え丁寧に作られた食事を、保育園から帰宅したらすぐ温めて食卓に出せる。おかげで私は子どもとの時間を大切に過ごすことができています」

夫は一通りの家事ができるが、外注にも賛成してくれた。共働きだった義母も、専業主婦だった実母も、理恵さんの選択を認めてくれている。家族の幸せや健康、子どもとの時間、仕事の状況、すべてを考えぬいて、家事を少し人に任せているだけ。誰からも非難されていない。それでもなお、理恵さんには心苦しさがあるという。

「家事より仕事が得意な女性がいてもいい。その分、私はしっかり働いているのだからと、何度も肯定しようとするけれど、やっぱりお金で家事を買っているという気持ちは消えない。罪悪感というより劣等感でしょうか。“頑張りきれてない”気がするんです。頭では納得しているのに、別の感情が湧いてくる。もはや自分との闘いですね(笑)」

 


ルポ・ラクすることに罪悪感がつきまとうのはなぜ?
【1】弁当に冷凍食品はNG! 丁寧に暮らすという「呪い」に縛られて
【2】「最近、宅配が多いね」。夫の言葉で責められたような気持ちに
【3】壮大な家出を経て今はやりすぎないように