簡単な家事を夫に教え始めて

佐和子さんはめげずに、その後も、旅行や年老いた両親の世話で、数週間単位で家を空けるようになった。

「ある時、不在にした2週間、夫がカーテンを一度も開けず、コンビニ弁当ですませていたとわかって唖然として。ここまで彼の生活力が低くなったのは、私が家事をやりすぎたせいだと、まったく別の罪悪感を覚えました」

以後、佐和子さんはゴミ出しや、洗濯物のたたみ方、電子レンジの使い方など、ごくごく簡単な家事を夫に教え始めた。

「今までいくら言ってもしてくれなかったのに、『何曜日は朝8時に新聞をしばって家の前に出して……』などと手順を全部書き出してカレンダーに貼り付けておくと、できたんです! あ、こういう伝え方なら、彼にもできるんだと」

10年をかけて、夫は少しずつ身の回りのことを一通りこなせるようになっていった。娘夫婦との同居などを経て、再び完全な2人暮らしになった今、佐和子さんは週2回、「家事をしない日」を設けている。

「そう決めておかないと、ついやっちゃうから(笑)。でもおかげで、他の日は自分のために家事ができて楽しいんです。この先、どちらが先に倒れるかわからない。自分の生活に責任を持って最後まで楽しく生きていくことが重要だと、今やっとそんな心境になりました」

家事を手抜きする方法は、いくらでもある。しかし、家事を大切にしたい気持ちは、家族を大切にしたい気持ちと切り離せない。それぞれの環境や状況の中、家事を楽にすることへの罪悪感に向き合う女性たちは、皆一様に、愛おしいほどに全力で、家族と生活に向き合っていた。

 


ルポ・ラクすることに罪悪感がつきまとうのはなぜ?
【1】弁当に冷凍食品はNG! 丁寧に暮らすという「呪い」に縛られて
【2】「最近、宅配が多いね」。夫の言葉で責められたような気持ちに
【3】夫に家事を教えて10年。60代女性が手に入れた「しない日」