いつも家の中をきれいにしておかないと……。家族がいる、いないにかかわらず、多くの人はそう思っているだろう。現在発売中の『婦人公論』10月23日号では、「家事はもう、がんばらなくていい」という特集を組んでいる。「しなければならないこと」に追われている日本人女性の姿は、フィリピン人家政婦の目にはどう映っているのだろうか。(取材・文=玉居子泰子)

便利な道具もたくさん。日本の家事はラク?

掃除、洗濯、炊事……人が生きていくうえで必要になる家事は万国共通、生活がある限りゼロになることはない。一世代前の日本では、専業主婦が家事のすべてを引き受けていたが、現在は「男女共同参画」が謳われ、働く女性が増えている。必要に迫られて家事を手伝っている男性は、以前より増加したはずだ。

しかし、筆者は仕事をしながら2人の小学生を育てる身として、日々家事に追われていると実感している。朝、目が覚めると、ぼんやりとした頭でまず考えのは、「あ、今日は燃えるゴミの日だ。卵、まだあったっけ? 朝ごはんのおかずは、どうしよう。でも今日は朝から打ち合わせだから、あまり時間がない!」。布団から出る前にすでに焦りが募る。

昼間は仕事をしているうちにあっという間に時間が過ぎていく。夜は夜で、ごはんをつくり、家族が着た洋服を洗濯し、食器を洗い、水まわりを掃除……と、いくつもの家事が待っている。

2017年3月、国家戦略特区である東京都と神奈川県で、外国からの家事支援人材の受け入れがスタートした(現在は、大阪府と兵庫県でも開始)。2018年7月時点で、事業認定を受けている家事代行サービス会社は、6社。家政婦の国家資格があり、海外へ家政婦を送り出すことを国家政策としているフィリピンからをメインに、優秀な“家政婦さん”たちが、日本にやってきている。

「フィリピンでは、日本は憧れの国。働きに行きたい人はいっぱいいる」と言うのは、日本に来て半年、香港とマカオで住み込み家政婦の経験があるサロメさん(39歳)だ。

「日本での家事代行の仕事は、それほど大変だと思いません。香港やマカオでは、24時間態勢で家族の世話をしていました。夜中に起こされてお客さんのごはんをつくったり、大勢の家族の皿洗いや洗濯をしたり、自由な時間は全然ありませんでした……。なかでも洗濯は大変。染料や染色の技術の問題で、色物は白い服と分けて洗わないと、すぐに色移りしてしまうのです。ちゃんと分けたつもりだったのに、ご主人の白いシャツに赤いシミをつくっちゃったときは、怒られるのが怖くて『ごめんなさい!』って何度も謝りました。でも、日本ではそんな心配はほとんどありません。洗濯機も、立派な掃除機もあるし、研修で教わった手順どおり作業すれば、満足していただけます」

確かに、洗濯機に入れれば機械が洗ってくれるし、床用のワイパーにロボット掃除機、さらには食器洗い機などの便利家電で溢れる日本。フィリピン人家政婦さんが「大変ではない」と言う家事に、なぜ日本人女性は追い詰められているのか。