忙しいんだから、家事を人に任せて当たり前

だが、彼女たちを最も驚かせているのは、日本人女性がひとりで抱える「タスクの多さ」だ。

「もちろん香港やマカオの女性たちも、みんなすごく忙しい」とサロメさんは言う。「朝から働きに出て、帰宅後は子どもたちを習い事に連れて行って。でも、だからこそ家政婦を雇う。共働きの人はみんなそうです」。

また、メアリさんによれば、フィリピンでは、経済的に特別恵まれた人でなくても、家事を外注するのはごく一般的なことだという。

「お金持ちの人は、資格を持った住み込み家政婦を高いお金を払って雇います。でも、もっと安い賃金で、フィリピンのなかでも地方から出稼ぎに来た人を住まわせる家庭も多い。洗濯だけちょっと手伝ってもらう、など人づてに紹介してもらいパートタイムでお願いすることもよくあります。収入に関係なく、忙しくて家事に手がまわらなければ、誰かに頼むのは普通のこと」

それ以外にも、家族や周囲の協力を得やすい環境がある。フィリピンは大家族で暮らし、近所に親戚が住んでいることも多いため、家事も子育てもみんなで手分けすることができる。一般的に家計の主な担い手は女性だだが、男性はその分、家事をするし、祖父母も孫の面倒を見てくれるそうだ。

そして、香港やマカオ、フィリピンでは、夕方になれば仕事を終えて帰宅する。遅い時間まで残業する人は、滅多にいない。大人の目と手が多ければ、家事や育児の負担が軽減されるのは当然だ。家庭の中でひとりの女性がすべてを担うことがない仕組み、環境があるのだ。

「でも日本人の家庭はどうですか? 家事に仕事と、全部女性がやっているみたい。家族や友達と楽しむ時間はあるんでしょうか」と、毎日忙しそうに仕事をしている、派遣もとである会社の日本人スタッフのことを、メアリさんは心配する。