その理由のひとつと思われる話を、母国・フィリピンでも家政婦経験があるメアリさん(39歳)から聞くことができた。彼女は、掃除の依頼を受けて訪れた家が、きちんと片付けられていることにしばしば驚くという。

「時々、すごくキレイで、私たち、どこを掃除すればいいの? と思う家があるんです。もちろんきちんと掃除はするけど、すでに片付いているから時間もかかりません。その家の奥様に、『まだ時間が余っています。ほかに掃除してほしい場所はありますか?』と聞くと、『特にないわ。じゃあ、私と一緒にもう一度掃除をしましょうか?』なんて言うんですよ。フィリピンで働いた家のご主人さまは、私が横で掃除していても、何もしない。子どもと遊んだりしています。手伝ってくれる日本人には、びっくり!」

家事代行サービスを頼んだにもかかわらず、スタッフが来る前に家の中を整えておき、自分も掃除を手伝うなんて滑稽に聞こえるかもしれないが、その心理はわからなくもない。たとえ家政婦さんであっても、散らかった家を他人の目に晒すのは恥ずかしい。あるいは自分の家で誰かが掃除してくれているのを、ただ見ているのは気がひけるということだろう。

実際、私のまわりには、「依頼する前に片付けなきゃ頼めない」「気を使うのがイヤ」という理由から、家事代行を頼んでみたくても踏み出せない、と話す人はたくさんいる。

「そんなふうに感じる必要はゼンゼンないのに! 日本人は親切ですね」とメアリさんは言うが、その根底にあるのは、親切心とは違うものではないだろうか。本来であれば自分がするべき家事を人に頼むことに、残罪感にも似た思いを抱いているのかもしれない。

しかし、依頼する前に片付けなくては、家事を人にお願いするのは申し訳ないという考えに囚われていては、日本人女性の家事負担は減らないはず。そんなふうに思っていると、彼女たちが日本の家事で「ちょっと不思議だな」と感じることを話してくれた。

 

こんな違う!家事をとりまく環境

「日本は、洗剤もたくさん種類があるでしょう。日本語は勉強中で、ラベルが読めないから、覚えるのがとっても大変」とサロメさん。

言われてみれば、食器用、お風呂掃除用、トイレ用、水垢用、焦げ落としクレンザー、ガラス用……。パッと思いつくだけでもたくさんの洗剤があり、ドラッグストアや通販で、用途に合わせた商品を買うことができる。その一方で、よく使うものは切らさないよう、忙しい日々のなかで気を配り、こまめに買いものに行くのもひと苦労だ。