「この洗剤は窓拭きだけ、リビングの床はこの専用のものを使ってなど、お客様ごとにそれぞれ決まりが違います。オーガニックの洗剤だけを使ってほしいという人も! 部屋ごとに使う雑巾や布巾を分けるのも、どうしてですか? わからない……。ペットの食器はキッチンで洗ってはダメ、洗面台で、と細かいです。フィリピンは、そこまでしません」
一方メアリさんは、床を掃除するときに、掃除機、フローリング用ワイパー、雑巾と、3つも道具を使うことに衝撃を受けたという。
「掃除機をかけて終わりじゃないんですね。掃除機をかけたのにさらにワイパーで埃を払って、水拭きまでする! 日本人は、ホントにキレイ好き」
ほかにも、「玄関は家の中にあるけれど、外の延長だから、室内用とは別の道具を使う」「和室は畳の目に沿って掃く」などの文化的背景からくる日本独特のルールや、ゴミの分別の細かさも彼女たちを驚かせる。
「生ゴミ、プラスチック、紙……商品のパッケージは外して別にするなんて、そんな国は日本だけ! 分別には、すごく時間もかかるでしょう? フィリピンも香港もマカオも、全部一緒にポイッて捨てるだけでしたよ。簡単、簡単」とサロメさん。
もちろん、たとえ疑問があっても、きちんとルールに従い丁寧な仕事をするフィリピン人スタッフの皆さんは、評判がいい。だが時には、「水まわりの掃除をお願いしたけれど、蛇口が思ったよりピカピカになっていなくて残念」「浴槽の乾ぶきが完璧ではなく、水滴がついていた。次は気をつけて」といった指摘を受けることもあるそうだ。
そういった家庭が普段、自分たちで掃除をするときも完璧にしているかどうかはわからない。家事代行を依頼する側としては、お金を払ってプロに頼んでいるのだから完璧にしてほしい、という思いもあるのだろう。それでも、サロメさんやメアリさんに言わせれば、「日本以外のほかのアジアの国では、そこまで気にする人はいない、かも……」。
食卓で出される料理の品数の多さも、日本ならではだ。
「メインの料理に、味噌汁、きんぴらごぼう、煮物、お野菜などの副菜、ごはん、と和食は品数が多いですね。香港では、大人は基本、朝と昼は外食。だから用意するのは子どもの分だけ。といっても、朝は市販のクラッカー、昼は米と具を煮るだけのおかゆでOK。簡単でしょう。だから、家政婦の私たちがちゃんとつくるのは夜だけですよ。しかもメイン料理を一品、どんと大きなお皿に盛って、家族みんなでシェアです。でも日本はひとりずつお皿を用意するんですよね、すごい!」(サロメさん)