「悪名高き家制度があったことで、氏は長らく家の名前だと思われていますが、現在の制度においては違うからです」

あなたの氏は「代々の家の氏」ではない

酒井 夫婦別姓の必要性を三権の長も認めている。主要政党で反対しているのは自民党だけですが、世代差は感じますか。

木村 やはり若い世代のほうが理解はあると思います。

酒井 じゃあ、上の世代がいなくなるのを待つしかない。

木村 それもなかなかしんどいですけどね。私が学生だった20年前に、まもなく実現すると言われていた案件でしたから。ただ日本における夫婦同氏制は、男女平等の理念に沿った、むしろ女性の権利保護のための制度であった点は忘れないでほしいと思います。

酒井 明治より前の平民に姓の概念はないですし、明治民法で家制度が導入されたんですよね。

木村 当時の妻は夫の家には入れてもらえず、明治民法が成立する1898年まで制度的には夫婦別姓でした。

酒井 儒教的な考えですね。妻は血統に入っていないから、同じ姓を名乗れない、と。

木村 ただ結婚後に夫の氏を名乗れないと不便なことが多かったので、現代とは逆に、同氏にする通称使用があったそうです。

酒井 この意識の変化は面白いですね。ちなみに木村さんはご結婚の際、姓をどうするかといった話し合いはされたんですか。

木村 はい。その結果、木村姓にしたという経緯があります。

酒井 詳しく教えてください。

木村 私の妻は民法の研究者で、「氏にこだわる理由がない」という立場です。もともとの自分の氏にも、婚姻後の氏にもこだわりはない。悪名高き家制度があったことで、氏は長らく家の名前だと思われていますが、現在の制度においては違うからです。

酒井 木村の「家」に入るわけではない、と。