平均睡眠時間は4~5時間

大家が言った「法人」契約とは、須磨子さんの実家の会社です。掛け持ちの3つの仕事のうちの一つで、実家の会社の会社員になっています。「モノづくり」の小さな工場で、須磨子さんは組み立て作業を担当。販路は主に国内ですが、製品は特殊なパーツなので、海外からも引き合いが来ます。先代社長だった父が他界した後、姉が経営を引き継ぎ、経理担当の母と、製造その他全般担当の須磨子さんの3人で回しています。

須磨子さんは、いまも平均睡眠時間は4~5時間。平日は工場に毎日出勤します。朝、自宅を5時45分に出て6時過ぎの電車に乗って都内の工場へ。7時の始業から働きます。お昼は手作り弁当を持参。午後3時まで働いて、慌てて帰宅します。3時半を回ると、その後が間に合わなくなるので大変です。

いったん帰宅して夕飯の支度をしてから、近くに借りている部屋へ。こんどは近所の子どもたちに教える個人塾の仕事です。1対1の完全個別指導ですが、最大で12人を教えていた時期もあります。いまの生徒は小中学生計4人。理科と国語は知人に頼んでいますが、残りは全教科、須磨子さんが担当。学習指導要領や教科書が変わるたび、最新情報に更新する必要があり、個別指導なので、けっこうな時間が準備に取られます。

「でも、出来なかった子どもが、こんなに出来るようになった、って見るのが楽しいの。教えるのは好き。私、先生に向いてたんだって、あとで分かった」

『老後の家がありません』(著:元沢賀南子/中央公論新社)
『老後の家がありません』(著:元沢賀南子/中央公論新社)