フリーランスには実感しにくかった所得税減税

もともと、須磨子さんは翻訳家でした。大学を卒業後、海外留学を経て、フリーランスの翻訳家としてキャリアをスタート。1990年代は仕事も多く、充実していました。ですが、景気の後退とともに仕事量が漸減。結婚、出産で家事や育児に手がかかるようになったこともあり、なかば引退したようなかっこうに。最近では、若手が増えて単価も下がりました。依頼があれば請け負いますが、翻訳の仕事は少なく、いまの主な稼ぎは工場と個人塾です。工場は会社員、塾と翻訳はフリーなので個人事業主。双方で税金を納めています。

「あの、政府の減税ってどこ行っちゃったの?」と、須磨子さんは不思議がります。この6月、政府は4万円の所得税減税を実施しました。国民に減税を実感させるように、企業に、6月の給与明細で「所得税0円」を明記するように指示した、と報道されていました。

「でも、ぜーんぜん」と須磨子さん。実家の工場は小さな会社ですし、個人事業主やフリーランスにはそもそも源泉徴収や給与明細がありません。モトザワや須磨子さんのようなフリーランスには、現金給付ではない「減税」は実感しにくかったです。

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しかも須磨子さん、今年の確定申告で衝撃を受けました。下の娘も就職して家を出たため、扶養家族がいなくなり、「税金がすっごい増えた!」のです。子育て中のシングルマザーは、「扶養控除」「寡婦控除」の二つで計100万円近い控除が受けられます。子どもが独立した須磨子さんは、普通の「おひとりさま」になったため、控除が丸々、なくなったのです。

「びっくり! 慌ててiDeCoを始めたわ」。iDeCoの掛金は全額、所得控除の対象になるので、所得税と住民税、両方で節税効果があるからです。