もしものときに家族を右往左往させないように、
元気なうちにできることはやっておきたい。
葬儀やお墓は? 財産を誰に残したい?
漠然とした考えはあるけれど、
明確に意思を示したり、
準備はしていない……。
案外そんな人が多いのではないでしょうか。
なかなか一歩を踏み出せない、
という人に役立つ
「終活」企画をお届けします。

西本願寺

お寺で心の構え方を知り、
自身の生き方を見直す
西本願寺を象徴する御影堂(国宝)は388年を誇り、私達の先祖も同じ柱を見て、触れてきたという歴史と伝統、力が感じられます。参拝時には、念珠をお持ちの方は持参すると良いとのこと

意外と身近な存在、京都の西本願寺

浄土真宗本願寺派の本山、西本願寺。鎌倉時代に親鸞聖人(しんらんしょうにん)によって開かれ、その後、蓮如上人(れんにょしょうにん)によって広く浸透し発展したお寺です。その名前から「特別な用事がないと行けない」など、縁遠い存在と思われるかもしれません。しかし、実は誰でも気軽に伺える場所なのです。『婦人公論』でも2006年秋、創刊90周年記念イベントを開催し、100人の読者が西本願寺での特別なひと時を堪能しました。

2023年12月にお披露目された西本願寺のタグラインとブランドマーク

コロナ禍には、お参りできない方のために法要の中継を開始し、本山としての情報を発信しています。また、お寺としては珍しく、昨年にはブランドマークも制定しました。新しい施策を始めることで周囲を驚かせつつも、お寺に親近感を持つ人も増えているようです。

お寺での“終活”と聞くと、葬儀の準備を整えておくことをイメージするでしょうが、西本願寺が伝えたいことはそれだけではありません。生きているうちにこそ、生き方を見直すことが大切なのだといいます。西本願寺の尾井貴童さんと副田智子さんに、詳しくお聞きしました。

生前にこそ法名や院号を

「浄土真宗は、み仏(ほとけ)の教えを信じて“南無阿弥陀仏”を称えれば、誰もが平等に救われるという教えです。お念仏(南無阿弥陀仏)を称えることは、“どんな時でもあなたのままで大丈夫”というみ仏の私たちへのよび声でもあります。何かと気忙しく、あくせくする現代社会においてお念仏を称えることは、心の安寧や心のよりどころとなり、生きていく上での力にもなります」

責任役員執行の尾井貴童さん(左)と参拝教化部課長の副田智子さん。「世の中が変わっていく中で、決して変わらないのは浄土真宗の教義や本質ですが、“伝え方”は参拝者目線を考えて変えていかなければと、色々と思案、企画しています」

「終活とは、身辺整理など物質的あるいは物理的な行動を伴うことが多いと思われているでしょう。しかし終活とは、“心の構え方”を知ることでもあるのです。人間にとって“死”とは怖くて寂しくて悲しくて、考えるほどに構えてしまい、つらくなることもあります。でも、誰にでもその時は必ず訪れます。その時に気負うことなく受け入れられる“心の構え方”が、み仏の教えです。“法名(ほうみょう)”をいただくことで身近にみ仏の教えを知ることができ、これまでの自分の生き方を見直せるようになるのです」

法名とは、仏弟子となって名乗る名前のことで、多くの方は亡くなった後には法名をいただくことになります。しかし、生きているうちにこそ法名をいただくことで“心の構え方”を知り、自分の生き方を見直すことができる。それが西本願寺のひとつの終活なのです。

法名はおかみそり( 帰敬式〈ききょうしき〉)の儀式でいただくことができます。受式を通して自分のいのちを見つめ、み仏にあってこれからの生き方を定めていく心構えができるということです」

法名と同時によく聞く言葉に“院号”もあります。院号は、み仏の教えが永代に渡って受け継がれていくよう、浄土真宗の発展に特に貢献した方に渡される名前です。法名同様に生前にいただくことができるようです(永代経懇志20万円以上など)。

「おかみそり(帰敬式)は、浄土真宗の教えと志を同じくする方であれば、どなたでも受けることができます。

また、院号の取得は自分にとって本当の教えに出会ったことへの感謝でもあります」

帰敬式は、毎日2回実施(①晨朝(6時)後引き続き、②13時30分~)。冥加金は成人1万円、未成年5000円
帰敬式を終えて

母が亡くなる少し前に法名のことを知り、今後のことも考えて家族で帰敬式に臨みました。せっかくいただいた命。死ぬことはあらたな命をいただくことだという教えをいただきました。帰敬式を終えて気持ちも新たに、法名をもって生きていこうと思います。

西本願寺に身を置き、心を落ち着かせる

終活には関心があるけれど、「何から始めていいか分からない」「何だか焦る」「不安だけが大きくなる」という状況ならば、西本願寺に伺ってみましょう。JR京都駅から車で数分、市の中心部にありますが境内は静かな雰囲気です。特に国宝である御影堂(ごえいどう)は広々としていて、そこに身を置くだけでも心が落ち着いてくるのがわかるでしょう。

「本願寺の御堂はみ仏の教えを聞いてみ仏と一対一で対話する場所です。朝5時半の開門から17時の閉門まで、誰でもずっと居ていただいていいのです。仏教では、生まれてくる時も独り、死ぬ時も独りという教えがあります。厳しい教えではありますが、み仏に向き合うことでその意味、厳しさもわかるようになると思います」

境内は参拝自由で拝観料は不要、“誰もが、ただ、いていい場所”です。御影堂で過ごしたり、朝6時からの晨朝(じんじょう)(毎朝、約1時間)にお参りしてみたり、境内ツアーや定期的に開催されるイベントへの参加は、今まで縁遠かった西本願寺とみ仏の教えを知る近道になるかもしれません。そうして心が落ち着いてきたら、終活や法名、院号のことを改めて考えてみてはいかがでしょうか。

(右)西本願寺の僧侶がガイドとなって境内を案内する「境内ツアー」は、1日4回開催。参加自由で無料です。(左)通常非公開の重要文化財「本願寺伝道院」で、学びのご縁を結ぶ講座「TERAKOYAHONGWANJI」では、講演会や体験、ワークショップなどを企画中

お問い合わせ

龍谷山本願寺(西本願寺)

本願寺参拝教化部
京都市下京区堀川通花屋町下る本願寺門前町
TEL:075-371-3738
(参拝教化部直通)
FAX:(075)371-7601
https://www.hongwanji.kyoto 帰敬式のことについて詳しく知りたい方はこちら

本願寺や帰敬式のパンフレットなど資料をお送りします。資料請求のお電話をいただいた方全員に記念品を差し上げます(婦人公論を見た、とお伝えください)