昭和レトロブーム
「もしかして、ここの遺物には思った以上に価値があるのでは?」と私が気付いたのは、母が水屋箪笥をあけて中の食器を応接間に並べ始めたときでした。
そういえば、昨今昭和レトロブームなるものが来ているらしい……。
私が生まれた昭和50年代もかろうじて含まれるようで、あのころの家の台所にふつうにあった玉すだれや(なんで必ずあったんだろうあれ、結界なのか?)、フルーツの輪切りの断面がプリントされたグラスなどなど。
あとは人形やかごバッグ。高い位置専用の扇風機。ラタン家具。水差し。そういえば鍋にもかならずプリントがありましたね。いまはほとんどないような。
なにせざっと見積もって祖父が暮らしていた時代から30年、時がとまった家です。祖父の衣類もそのままだし、なんなら祖母の使っていた半纏まである。
中でも興味深かったのは叔母のものらしいセーターやジャケットやトップス。いい言い方をすればまるで古着屋のよう。もちろん虫に食われているものもあるでしょうが、まあ、そんなものでも使う人は生地代わりに使うもの。
ワゴン車とともに再び舞い戻ってきた最初の客のおじいさんは、思った以上に人が来ていたことに焦ったのか、さっきの倍速の動きで叔父や叔母の服をワゴンに積み込み始めました。
聞けば少し離れた場所で服のリユース店をやっていることのことで、いやあ、なんでもお知らせってだめもとで出すものですね。どうりで服ばっかり見てると思った。
※本稿は、『私の実家が売れません!』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
『私の実家が売れません!』(著:高殿円/エクスナレッジ)
郊外築75年、大量のガラクタ、恐怖の再建築不可物件……。
残された実家は超問題だらけ!!
笑いと涙、前代未聞の実家じまい本!