難物の映画化
原作は1965年に発表されたフランク・ハーバートのSF大河小説「砂の惑星」。その世界観が多くの監督や制作者を魅了するも、映像化は困難を極め、最初の監督ホドロフスキーは10時間の作品を企画したが中止に追い込まれた。1984年にはかのデヴィッド・リンチが映画製作。2000年にはテレビシリーズが製作されるも、共に失敗作と評されている。
「それも仕方ない」と思うのは、とにかくスケールが大きく、実写化が難しかったのは当然だからだ。しかし先人の努力の上に5人目の挑戦者となったドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、遂にこの難物の映画化に成功した!!
最初観た時、『惑星ソラリス』を連想した。やはりヴィルヌーヴ監督は、タルコフスキー監督のファンだそう。また、主演のティモシー・シャラメは、『ベニスに死す』の主人公タッジオを演じたビョルン・アンドレセンを思わせる美しさ。多くの人が「彼の瞳には、仄暗さが宿っている」と表現しているが、美しすぎる俳優特有の「軽さ」が無い。
トム・クルーズやディカプリオでさえ若いころはアイドル俳優だったし、ヨーロッパ出身の名優マイケル・ケインも、初期の主演映画『アルフィー』では軽さを否めない。しかし、ティモシー・シャラメは27歳の若さで特別にシリアスな役を得、文學的な雰囲気をまとうトップスターに躍り出た。
ユーチューブなどのゴシップを見れば、10代はやんちゃなRAP少年だったようだが、数々の名監督に愛され、良質な作品に抜擢されるようになり、『君の名前で僕を呼んで』で、繊細な芝居ができることを証明。今を時めくスタートとなった。このまま伸びてと願わずにいられない逸材だ。