最も見事なSF映画のひとつ

けれどこの『デューン/砂の惑星』において、映像は完璧だった。砂漠の中で美しいドレープがたなびく衣装は古代文明を思わせ、絵画を見ているような映像美。砂漠を移動するための保水スーツや戦士の甲冑などは未来的なデザインだが、新旧の衣装が違和感なくなじみ、撮影地ヨルダンの風景に見事にマッチ。特別な世界を作り上げた。

私は最初、この映画がハリウッド映画だと気づかなかった。なぜなら、ハリウッド映画にしては、色彩が深く映像が絵画的で、キャラクター造形も複雑。ムードがヨーロッパ映画の其れだったからだ。実際監督のドゥニ・ヴィルヌーヴはカナダ出身。主演のティモシー・シャラメはフランス人の父をもち。一年の数ヵ月をパリで過ごして成長した。

ある意味本作は、ハリウッドの資金やテクニックとヨーロッパの才能の見事なマリアージュといえる。結果、2021年に公開された一作目は大変な興行業成績を上げ、94回アカデミー賞に10部門でノミネート、6部門を受賞。

2024年の第二作は、更なるヒットでシリーズ売上合計10億ドル(約1500億円)を突破! かのスピルバーグが「今まで見た中で、最も見事なSF映画のひとつ」と評したのである。