防災心理学キーワード
●防災心理学キーワード

矢守 そこは大事なポイントです。自治体が指定している避難所は川が大規模な氾濫を起こしても、絶対に水が来ないような場所になっています。ですから実際は、そこまでの事態にはめったになりません。もう少し小規模な水害だったら、無理して遠くの小学校まで行かなくても、隣の3階建てのビルに避難させてもらえば十分というケースもある。

ですので、ふだんからそういう「セカンドベスト」な避難場所をチェックしておくことが大切です。自治体指定の避難所は100点満点だけれど、60点でもいいからほかの場所を見つけておくと安心感が増すでしょう。

紺野 避難所が遠いと、足腰が弱っている高齢者の方や障害がある方などは大変ですものね。

矢守 西日本豪雨の際に岡山・真備町で亡くなった51人のうち42人のご遺体は自宅の1階で見つかり、そのうち21人は2階建ての家にお住まいでした。あっという間に水が来ますから、2階に上がるのが間に合わなかった方もいると思います。

紺野 たかが2階くらいと思わず、日頃から上がる訓練をしていたほうがよさそう。

矢守 その通りです。さらに言うと、足腰が弱っている方でも避難をあきらめず、なんとか「玄関先まで出てくる練習」をしていただきたいのです。

玄関先でペンライトやホイッスルで合図すれば、誰かが気づく可能性が高まりますし、ご本人の命を救うと同時に、救助してくださる方の活動も助けることになりますから。