「99回何ごともなく終わっても、100回目に本当の大災害に見舞われるかもしれない……」(紺野さん)

避難したことがムダになってもいい

矢守 私は今回の能登半島地震の被災地にも調査に入りましたが、なかでも印象に残ったのは、津波被害に遭った集落の方のお話です。「徹底した避難訓練のおかげで、間一髪、住民の皆が無事に避難できた」と。やはり努力は実るのだと思いました。

世の中には「避難しろと言われたからしたのに、災害なんて起きなかった。骨折り損だった」と言う人がいますが、私はよく、「空振りではなく、素振りと考えよう」と言っています。

結果的に何も起きなかったとしても、万一のために準備して避難するという経験がないと、いざという時に逃げられないものなので。

紺野 99回何ごともなく終わっても、100回目に本当の大災害に見舞われるかもしれない……。

矢守 そうなんです。健康のために毎年人間ドックを受けて、「何も悪いところはありません」と言われて、「ああ損した、ムダ金を使った」と思う人はいませんよね。たとえ空振りに終わっても避難することが大事です。

紺野 そう考えるとわかりやすいです。あと、絶対に地域指定の避難所に逃げたほうがいいのでしょうか? 行くには遠い場合などもあると思うのですが。