『恋人たちはせーので光る』著◎最果タヒ

 

同時代を生きる詩として、支持

教科書に載っているような近代詩の詩人じゃなくて、今生きている詩人で好きなのは? と若者に訊くと、最果(さいはて)タヒの名が返ってくる率がここ数年ものすごく高い。特に女子。10代後半から30代くらいまでに抜群の人気なのではないか。新宿ルミネの2017年クリスマスキャンペーンが最果タヒの詩のインスタレーションで展開されたり、詩集が映画化されたり(『夜空はいつでも最高密度の青色だ』石井裕也監督)、横浜美術館で詩が展示されたり、さまざまな方面で注目されている若手詩人である。

横浜美術館に展示された詩を含め、43篇をおさめた第7詩集。〈ぼくがきみを好きだとしても、きみにそれは関係がない。割れてしまったガラスは以前より光を反射するから、本当は境界線などなくしてただキラキラとするべきだった〉(「座礁船の詩」)。平易な語り口、それでいて日常のやりとりに使う言葉とは異なる響き。詩人個人の体験やメッセージを押しつけるのではなく、微妙な感情や些細な揺れそのものの息づかいで読み手の心に届き、隠されていた孤独な痛みにそっと触れようとする詩。現代の空気感を鮮烈に反映しつつ、普遍的な魅力がある。

ブックデザインは祖父江慎。1篇ごとに文字列の形が変わり、ページを繰るたび新鮮な言葉との出会いが仕掛けられていて楽しい。初版1万部で刊行され、すぐに重版が決まったとか。本が売れなくなったとは言われるが、詩はもっとずっと前から安定して売れていない(柴田トヨ詩集『くじけないで』のようなことは例外中の例外で、大半は数十部からせいぜい数百部である)。そんな中、本書を含めた最果タヒ詩集の売れ行きはすばらしい。同時代を生きる詩として支持され、求められているのだ。

 

『恋人たちはせーので光る』
著◎最果タヒ
リトルモア 1200円