サウナにいた恐ろしいおばさん
低温サウナは広かった。30畳ほどあったのではなかろうか。巨大なテレビが置いてあり、昼はだいたいゴルフ番組が流れていて、恰幅のよいおばさん達が、股にタオルを挟み、足をまあまあ大きく広げて(出産時の妊婦くらい)テレビを睨みつけていた。もはや乳房を隠すなんてことは一生なさそうな堂々たる生き物にみえたその人たちのことが、まだ若かったわたしには、恐ろしくうつり、上も下も小さめのフェイスタオルで懸命に隠しながら、部室に緊張しながら出入りする1年生のようにそそくさとドアを開けて急ぎ出た。
外には塩サウナもあった。フロントで購入したマイ塩を、いつも車の座席に置いていた100円ショップのプラスチックバックに入れて持ちこむ。塩サウナにも、堂々と睨むおばさんはいた。塩を掴んではカラダに擦り込み、「あああああ」と低い声で息をしながら熱風に耐えていた。
若いわたしは、やはり肩身が狭く感じながら、塩をカラダに塗り込んだ。
塩サウナから出てシャワーを浴びて、プラスチックの寝転べる椅子に横になると、眼下には名古屋市街の夜景がキラキラと輝いていた。暑い体を冷ましながら風を感じて夜景をみる時間は、なによりの癒やしだった。秋には、鈴虫の声が聞こえた。最高だ。
そして、わたしの記憶が確かならば、30年前、入泉料は300円代だったはずだ。安い。