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テレビ番組におけるスタイリストの草分けとして、『電車男』『のだめカンタービレ』『セカンドバージン』『家売るオンナの逆襲』など、これまでおよそ200本のドラマに携わり、女優・俳優がドラマ内で身に着ける衣装のスタイリングを手掛けてきた西ゆり子さん。その西さんが2022年6月に、一般女性に向けて開校したのが『着る学校』だ。それまで芸能界を中心に仕事をしてきた西さんは、なぜ“普通の女性たち”に「服を着ること」を教えようと思ったのか。連載2回目以降は、『着る学校』で実際にレッスンを受けた生徒さんたちの体験談を紹介し、「服が持っている力」や「着る服を変えると、人生がどのように変わるのか」についてお話を伺った。(構成◎内山靖子 全5回連載/第1回)
一般女性のために『着る学校』を
30代の頃から『11PM』『なるほど!ザ・ワールド』などのテレビ番組で、女優やタレントといった芸能人のスタイリングを主に手掛けてきました。その後、ドラマや映画の仕事がメインとなり、登場人物の個性に合わせて衣装を選ぶ仕事はとてもやりがいがあったので、正直な話、一般の方のおしゃれに関しては「私の守備範囲じゃない」と思いながらずっと過ごしてきました。
それが60代になったとき、知人の紹介で、一般の女性のパーソナルスタイリングをお手伝いすることになったのです。そのときに感じたのが「着る服が変わると、その人の表情や生き方がこんなにも変わるのか」ということです。それまでグレーやベージュなどの大人しい色の服を着ていた方に、その人が本当は着てみたい!とおっしゃるピンクや鮮やかなブルーの色の服を選んであげると、顔つきがパッと明るくなって、別人のように表情がイキイキ輝く。「誰にとっても、服の力って、こんなにすごいんだ」。かれこれ45年以上スタイリストをやってきて、そのときに、あらためて服が持っているパワーを実感させられたのです。
とはいえ、その方が服を選ぶ際に毎回私がついていくわけにはいきませんし、日々の服は自分で選んでこそ楽しいのです。そのためには、心の鎧を外して本当に好きな服を選び、自分自身で「着る力」を身に着けていただかねばなりません。何事も基礎が大切なように、おしゃれに対する心構えやスタイリングの知識を知っておく必要があるのです。でも、ふと考えたら、そんなことを教えてくれる学校はどこにもありません。お料理教室や着物の着付け教室はたくさんあるのに、なぜ、服を着ることを教えてくれるところはないのだろう? そんな疑問を投げかけたところ、「じゃあ、『着る学校』をつくりましょう」と賛同してくれるスタッフがいて、私が71歳のときに『着る学校』を開講する運びになったのです。