「運営者のひとりが民生委員だったこともあり、独居の高齢者の状況は把握していました。ですから、すぐに『よろしければ、利用してみませんか?』とお声がけすることができたのです。
調理場は私の実家である元旅館の厨房を使えばいい。私は栄養士の資格も持っているので、メニュー作成にも役立ちましたね。すごく順調に進んでいたんですよ」(坂下信子さん・84歳)
ところが今年の元日、能登半島地震に見舞われる。拠点の元旅館は全壊。坂下さんたちは、業務再開は困難だろうと諦めたが、公民館の館長が市役所に掛け合い、利用者不足で閉鎖した保育園の厨房と保健室の使用許可を取り付けてくれたという。
6月から週2日、1日約20食限定で、保健室を改造した食堂で料理を振る舞い、弁当の宅配も再開した。
「食堂に来られるお客様は仮設住宅の居住者が中心で、被災者同士、励まし合う憩いの場となっています。『地元の方たちの孤立を防ぐためにも、この場所を大事に保たなくちゃね』と、メンバー同士で話しているんですよ。若者の少ない地域だから、高齢者同士で助け合っていかないと」と、坂下さんは意気込みを語った。
【ルポ】いざという時に助け合える ゆるく繫がる地域の《居場所》
(1)<石川県輪島市「かあちゃん弁当」>励まし合う憩いの場
(2)<東京都世田谷区「砧むらおばちゃん会議」>安心感を近所で共有
(3)<大阪府堺市「グループ・スコーレ」>必ず誰かが世話を焼く
(4)<兵庫県豊岡市「だいかい文庫」>人との出会いは繋がりの貯金