豊岡駅前から延びる商店街にある「だいかい文庫」。ガラス張りで、入りやすい雰囲気(撮影:霜越春樹)
不安や心配ごとを共有できる仲間が近くにいたら、どれだけ心強いか――。ご近所同士で助け合える場を自ら作り、そこに集う人たちはどんな関係を築いているのだろう(撮影:霜越春樹)

<兵庫県豊岡市「だいかい文庫」>
人との出会いは繋がりの貯金

高齢者だけでなく、世代を超えて繋がる場所が兵庫県豊岡市にある。2020年にオープンした図書館兼ブックカフェの「だいかい文庫」だ。館長の守本陽一さんは31歳の若き医師。

「私が高校時代に母が急逝してつらかった時、寄り添ってくれた家族や友達に感謝すると同時に、どんな人でも受け入れてもらえるコミュニティが必要だな、と思ったのが始まりです」

医師となり、さまざまな環境に置かれる患者と向き合ううち、孤独や生きがいのなさなど病院では解決できない課題に直面。よりいっそう、その思いは現実味を帯びていく。

そんななか、「孤独はうつ病や依存症の発症リスクを高め、寿命を縮める大きな要素」といった研究データや、イギリスの医師の「薬でなく、人との繋がりを処方する仕組み『社会的処方』が急務」という論文に心から共感したという。

「私は、本を『孤独の味方』、図書館を、司書や利用者との何気ない会話など、他者とのゆるい繋がりを感じられる『中距離コミュニケーションの場』と捉えています。だから、地元に図書館を作ることにしたのです」