海苔漁師さんに話を聞く

佐賀に通うようになると、そのことを度々エッセイに書くようになった。そうなると仕事として佐賀で「取材」する必要も出てくる。

そんな流れで、ボクは佐賀市諸富町の若き海苔漁師・横尾雅也さんを訪ねた。

朝、佐賀市諸富町にある横尾さんの自宅に寄らせてもらう。生まれ育った家だ。近隣の家もみな海苔漁師だそうだ。

庭には海苔の乾燥室があった。採れたばかりのドロドロの海苔をここで、紙漉のように薄く漉いて、乾燥させ、板海苔にする。

見せてもらったが、ベルトコンベアから四角い海苔がすごいスピードで出てきて、重なって、束ねられていく。これを工場に出荷し、さらに加工して、焼き海苔ができあがる。

横尾さんの父も祖父も海苔漁師で、海苔漁は今や雅也さんの仕事だが、乾燥の作業はご両親がしている。

横尾さんに海苔の養殖の仕方を聞いた。これも今まで考えたことがなかった。六十余年、食べてきたのに。

夏の間、牡蠣の貝殻の中で海苔の胞子を育てる。そして秋、海水が冷たくなった時、胞子を貝殻から出して、落下傘と呼ばれる袋に入れ、網につけて海上に張る。

しばらくすると牡蠣殻から出てきた胞子が網に付く。そしてそこから海苔の芽が出る。それが30センチほどに伸びたら、海苔の収穫が始まる。この時最初に採れるのが「一番海苔」だ。