それほどに寝つきのいい私であった。寝ているところを電話でたたき起こされたとしても、そのあと睡眠のリズムを崩される心配もいっさいなかった。
ところが最近は、どうも寝つきが悪い。ことにゴルフの前夜や、早朝の新幹線に乗らなければならないときなどは、期待と不安が入り交じり、なかなか眠りにつくことができない。
そろそろ朝かと思って時計を見ると、まだ二時、そして三時、四時。一時間刻みで覚醒してしまう。あるいは夜中に一度は尿意に目を覚ます。
これが歳を取ったということか。
とはいえ、睡眠時間自体は決して少なくない。だいたい夜の十二時前に床について、朝早く出かける用事がないかぎり八時までは寝ているのが常である。同世代の友達が、
「最近、朝早くに目が覚めるようになって、歳取ったのかしらって思うわよ」
そう話しているのを聞くたびに、「まだ私は若いのか?」と秘かにほくそ笑むのである。