不平等、不条理にのまれないために

現実の世界には、様々な不平等や不公平がある。ここでは、これから人生を切り拓いていく高校生に、心理学のアプローチからの視点を示している。

「自分の行動によって、何に影響できるだろう? 善人なのに悪いことが起きる。悪人なのに成功する。才能があるのに貧しい人もいる。頑張っても裕福にならない。世界は常に公平ではなく、皆に同じ出発点はない。不平等、貧困、ストレス、収入の心配は知性を劣化させる。コントロール感は、自分の人生と世界に影響を与えられるという感覚で、それが強いと人はアクティブになり、影響を及ぼそうとする。

(写真提供:Photo AC)

しかし、試みても何にも影響を与えられないと思うと、自分は何もできないという無力感を学んでしまう。それは学習性無力感である。自分には才能も運もないと思い込み、それを持続させてしまう。(中略)影響を与えられる事と与えられない事、コントロールできる事とできない事を分けて考えるのが良い」

ここでも「分けて考える」ことを勧めている。それは、物事をごちゃ交ぜにせず文節化することであり、より明確化するための思考回路の1つになるだろう。

「コントロール感」は、自分の人生と世界に影響を与えられるという感覚、「学習性無力感」は自分には才能も運もない、どうせダメだ、何をしても変わらないという諦め感である。

日本では前者が弱く、後者が強いのではないだろうか。

調査によると「私個人の力では、政府の決定に影響を与えられない」という考えについて、日本の高校生の83%が「全くそう思う」、または「まあそう思う」と答えたという。それは米国76.2%、韓国64.4%、中国59.4%の回答と比べて高い。

フィンランドの教育は社会や政治に影響を与えることを非常に強調するが、日本でそうした教育はされていない。

自分の力で政府の決定に影響を与えられるという感覚が低いのは、当然の結果であり不思議はないだろう。