ヒャダ 僕の修学旅行も楽しくなかったなあ。
──どこに行ったんです?
ヒャダ 僕は九州でした。でもその行程がすごくて。最初に福岡に行って、最終地点が鹿児島なんですよ。
能町 めちゃくちゃ移動しますね!
ヒャダ 1日、移動のための日があるんです。バスで南北を縦断する。まあしんどかったですね。
久保 九州人でもそんなルートよう行かんわ。
ヒャダ でしょ? 長崎で被爆者の話を聞いて……。
能町 え、福岡から鹿児島じゃなくて、福岡→長崎→鹿児島?
ヒャダ そうです。阿蘇(熊本)も寄りました。
久保 ありえない!
能町 相撲の巡業みたい(笑)。
ヒャダ それを3泊4日くらいで行くんですよ。「そこまでしなきゃいけない?」と思ってました。長崎だと、ハウステンボスも行きましたよ(*)。
*長崎で被爆者の話を聞いたのはおそらく長崎市でのことで、そこからハウステンボスのある佐世保市までは車で1時間以上かかる。
能町 えええ! どういうスケジュール?
久保 そりゃ詰め込みすぎだよ!
ヒャダ だからやっぱり、自分の意思で行く旅のほうがずっと面白いですね。
久保 でも「修学旅行で県外に出る」という経験は、1回味わっておかないといけないんですよね。新幹線の乗り方がわからないまま大人になる人がたくさんいるという話も聞くし。私、高校の修学旅行で韓国に行って、一番良かったのはパスポートが作れたことだった。YouTube見てたら、人気のあるYouTuberの人が「今日は弾丸で北海道に行きます!」という企画をやってたんだけど、「実は飛行機乗ったことないんですよね」って、30代の人が言うわけ。
能町 でもありえますよね。
久保 そんなに経験値ないんだと思って。ずっと東京にいたんだろうね。
能町 私も修学旅行以来、たぶん27、28歳まで新幹線に乗ってないです。
久保 ええっ?
能町 だって用がないですもん。
久保 よ、用がない!?
能町 用がないです。旅行は好きだけど、20代はお金がないから貧乏旅行ばっかりで。青春18きっぷとか深夜バスとか。飛行機も子供のときには親といっしょに乗ってますけど、次に乗ったのが大学卒業後ですね。大学時代は1回も乗ってないです。
久保 ええっ、大学生なのに?
能町 だって乗る必要ないですもん。海外も行ってないし。
ヒャダ まあ自分の常識って、意外に他人の非常識なんですよね。
能町 そうなんですよ。今はこんなに青森と東京を往復してるのに。
久保 意外だった。能町さんはどんどん出て行く人だと思ってたから。
──在来線で東京に行ける場所に住んでいると、やっぱりよその地方にはあまり行かないんですかね。
能町 行かないです。私は小学校からずっと関東だから、修学旅行は別として、大学のときに各駅停車の貧乏旅行で初めて大阪に行ったんですよ。行って最初に思ったのは、「みんなマジでこの言葉しゃべってんの?」って。
一同 ああ〜。
能町 全員関西弁しゃべってることにけっこうショックを受けました。当たり前なんですけど。
ヒャダ 僕は逆のパターンで、東京に来たときに同じようなことを思いました。東京って、ちょっと幻みたいな感覚だったんですよ。
──テレビの中の世界。
ヒャダ そうですそうです。「本当に渋谷ってあるんだ!?」と思いました。話し言葉も「え、気取っているの?」という感じで。
能町 鈍行の電車に乗ってて、だんだん関西に近づいてきたあたりで、同世代くらいのギャル2人が乗ってきたんですよ。その2人がコテコテの関西弁をしゃべってたんですけど……私、最初「わざとかな?」と思ったんですよ(笑)。
ヒャダ 僕も東京に来たとき、そう思いました。たまに「この街から出たことがない」という人がいるじゃないですか。あれはあれでリアルな人生なんですよ。
能町 全然ありえますよ。
ヒャダ 「地元の常識が世間の常識」という人もいて。だから最近は「主語がでかくならないように気をつけよう」と思ってます。
久保 それは私も気をつけてるけど、「自分の世代(久保は’75年生まれ)がボリュームゾーンだ」という自覚をもっと持たないと……と思うようになった。私は少数派のほうかと思ってたけど、私が気付いてることは同世代もたくさん気付いてるし、私が腐ってたら同世代もいっぱい腐ってる。
ヒャダ 「昔語りして怒るのは、下の世代ではなく実は同じ世代だった」という話もありますよね。
久保 そう。同じ世代が同じ世代を潰しあってる(笑)。