根強いトランプ人気の証拠

こうしたトランプグッズの多くは中国製だった。なかには、バングラデシュ製やドミニカ製に加えて、メキシコ製まであった。2017年の大統領就任演説で「米国製を買い、米国人を雇う」と掲げたトランプの主張に反しているようだが、そのことを指摘してもオーナーは意に介さなかった。

むしろかれは商人に徹していた。いくつかグッズをレジに持っていくと、「これはどうだ」とカードのトランプを取り出してきた。トランプのトランプだった(英語の綴りは同じTrump)。

キングはトランプ、クイーンはメラニア夫人。そしてジョーカーのカードを少しみせて「誰だと思う」。わたしが「バイデン?」と応えると「イエス!」と満面の笑み。憎らしい顔をしたバイデン大統領(取材時)のカードをここぞとばかりに見せつけてきた。売り方がじつにうまい。追加で20ドルを支払わざるをえなかった。

筋金入りの支持者でないからダメなのではない。指導者への支持は、プロパガンダなどの「上からの統制」だけでは成り立たない。かならず便乗商売などの「下からの参加」をともなう。利に聡い商人さえ引き寄せているところこそ、根強いトランプ人気の証拠だった。

※本稿は、『ルポ 国威発揚-「再プロパガンダ化」する世界を歩く』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


ルポ 国威発揚-「再プロパガンダ化」する世界を歩く』(著:辻田真佐憲/中央公論新社)

何がわれわれを煽情するのか?

北海道から沖縄までの日本各地、さらにアメリカ、インド、ドイツ、フィリピンなど各国に足を運び、徹底取材。

歴史や文化が武器となり、記念碑や博物館が戦場となる――SNS時代の「新しい愛国」の正体に気鋭が迫る!