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中国人青年と蕎麦店主との心の交流

近年たびたびニュースとして取り上げられる技能実習生の失踪が、物語の発端だ。技能実習生として山形県にやって来た中国人青年チェン・リャンは、劣悪な職場環境から抜け出し、不法滞在者になってしまう。偽名のパスポートを作り、いつバレるか、びくびくしながらの暮らしが始まる。

私たちの周囲に存在する切実な社会問題を真っ向からとらえた力作だが、肩ひじ張った社会派作品ではない。誰かを糾弾するのではなく、人と人とのつながりこそが希望をもたらすことを鮮明に示して、爽やかな感動が味わえる佳作だ。

その後、リャンは、蕎麦屋の住み込みの仕事を見つける。店主の弘(藤竜也)は、日本語が覚束ないリャンを意外にすんなり受け入れる。その娘の香織(松本紀保)も、仕事や生活のことを笑顔で優しく教え導く。

本作が長編デビューとなる近浦啓監督は、1977年生まれ、2013年に短編映画『Empty House』で映画監督としてのキャリアをスタート。このとき、藤竜也の主演を切望し、事務所に脚本を送りつけて、その夢を実現させる。本作も藤を念頭に脚本を書き進めた。リャン役のルー・ユーライは、北京でのオーディションで即決。日本で07年に公開された『孔雀 我が家の風景』で彼が俳優デビューしていたことを監督は後に知ることになる。

俳優としてのキャリアを順調に歩むルーが、ほぼ無名の日本人監督作品である本作に出たいと願ったのは、藤竜也と共演できるからだった。映画監督でもあるルーは、「藤さんが出演する映画は、大学で映画を学んでいたときに何度も観ました。僕にとっては映画の教科書のような存在です」と語る。ルーの長編初監督作品『桃源』は、19年の大阪アジアン映画祭で上映された。

リャンが蕎麦の出前に行って知り合う女性・葉月を演じる赤坂沙世も、抜群の存在感だ。自由に生きる画家志望の葉月と交流を深めることで、リャンの毎日が輝き始める。

ときどき挿入される、リャンが日本に来る前の中国での生活も強い印象を残す。彼が日本行きを決意した経緯や、母や祖母が心配しながらも日本行きのために精一杯の工面をしてくれたことが描かれ、胸を打たれる。

藤竜也とルー・ユーライの好演はもとより、松本紀保が表現する慈愛に満ちた女性像も素晴らしい。彼女が演じる香織を昔ながらの日本女性の理想像とすれば、ひとり海外へ颯爽と旅立つ葉月は、軽やかに自立して生きる現代日本女性の理想像と言えるかもしれない。

とっつきにくいタイトルがもったいない気もするが、国も世代も異なる2人が絆を強めていく過程に心が温まり、また、藤竜也が見事な手さばきで作る蕎麦を無性に食べたくもなる、心優しい映画だ。

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コンプリシティ 優しい共犯
監督・脚本・編集/近浦啓
出演/ルー・ユーライ、藤竜也、赤坂沙世、松本紀保ほか
上映時間/1時間56分
日本・中国合作
■1月17日より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開

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ヒトラーを親友とする10歳の少年とユダヤ人少女

第二次世界大戦下のドイツ。10歳の少年ジョジョはヒトラーを空想上の親友にしている。ある日、家の隠し部屋にユダヤ人少女が。正義感の強い母親がかくまっていたのだ。スカーレット・ヨハンソン、サム・ロックウェルらの助演も楽しい、辛口のユーモアに満ちた人間ドラマ。1月17日よりTOHOシネマズシャンテほかにて全国公開

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ジョジョ・ラビット

監督・脚本・出演:タイカ・ワイティティ

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「24歳のクララ」と青年の恋

大学で文学を教える50代のクレールは、Facebookに「24歳のクララ」と登録。20代の青年アレックスとメッセージをやりとりするうちに恋心が燃え上がるが……。恋をしてどんどん美しくなりつつも理性を失っていくクレールをジュリエット・ビノシュが好演、ハラハラさせられる。1 月17日よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開

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私の知らないわたしの素顔

監督・脚本:サフィ・ネブー