斎場で彼女が骨になった時に感じたのは、肉体は借り物であって、そこに命を入れて使っていたのだということ。借り物の肉体が使いものにならなくなったら、もう捨てるしかない。でも、中身はちゃんと存在しているし、その中身と、僕はこれからもつきあっていく。そう思い、自分なりに「宗教改革」をしようと思いました。
というのも、お寺さんも最近は檀家さんが減っているせいか、なかなかお金にシビアなようで。大変なのはわかりますが、それが本当に仏の道なのかという疑念があったので、だったら特定の宗教ではなく、僕なりの祀り方をしようと。ですからうちには、仏壇もありません。
その代わり、棚の一角を家に見立てて、ドールハウス用のミニチュアの家具や小物を集めてメイコの部屋を作りました。名付けて「メイコの休息所」。お酒が好きな彼女のためにバーカウンターも作りましたし、キッチンにはちゃんと料理の用意もしてあります。
亡くなる2年くらい前から、僕が料理をするようになり、それを彼女は本当に感謝してくれていました。ですから、ちゃんとテーブルの上に料理を置きたかったんです。
その部屋には彼女の写真もたくさん飾ってあるし、テレビも見られるようになっていて、死ぬ6日前に収録された『徹子の部屋』の場面を貼ってあります。
階段を上がると2階がベッドルームで、ベッドの上に置いてあるミニチュアの帽子ケースの中に僕らの結婚指輪を入れています。なくすと困るからといってあまり外ではしていなかったけれど、彼女はその指輪をすごく大事にしていました。
毎朝、メイコの部屋にライトを当てて、しばらく話しかけます。「もうすぐそちらに行くから、ちょっと待ってて」なんてね。「昨日はこんな人と会ったよ」とか、毎日、話したいことがいっぱいあるんです。話すと、僕も落ち着く。とにかく1年間は、毎日、話しかけようと心に決めていました。