愛と音楽に国境はない
松下洸平さん(以下・洸平) フランクさんとは2017年に『スカーレット・ピンパーネル』という作品でご一緒させていただきました。そのときも感じたんだけど、フランクさんが作る楽曲は本当に力強くて美しい。まさに、ザ・グランドミュージカル。今回も、稽古をしながらこの素晴らしい音楽に触れているだけで、ワクワクして嬉しくなっちゃって。
松下優也さん(以下・優也) うん、こんなに素敵な曲を自分が歌うんだって超興奮! 自分の曲以外でも、なんなら歌いたい曲がたくさんある。(笑)
フランク・ワイルドホーンさん(以下・フランク) アリガトウ! 僕の音楽にはいつも感情がすごく込められています。脳みそのスイッチをオフにして、感情だけで曲を書いているんですよ。
優也 だから、こんなにエモーショナルな曲が生まれるんですね。
フランク とくに、この『ケイン&アベル』は僕の家族の物語と重なっているからね。母はウクライナのオデッサ生まれ。父はルーマニア出身。東欧から移民としてアメリカに渡ってきたので、アベルの人生とよく似ています。そんなことも思い浮かべながら、今回の曲のイメージを作っていきました。
洸平 そんなバックグラウンドがあったんですね。
優也 おまけに、今回のミュージカルは日本で初演でしょう。僕らの歌や芝居がオリジナルになるって最高! フランクさんが書き下ろした曲を、世界で最初に歌える人間になれたことがすごく光栄だなって。
フランク 僕も2人の才能に大いに期待しています。ブロードウェイだろうがロンドンだろうが、トーキョーであろうが、どこの国の俳優であるかということは、僕にはまったく関係ありません。「愛と音楽に国境はない」。それが僕の哲学なんですよ。
優也 そう言ってくださるのがすごく嬉しい。日本って、異常なまでに「他の国の人だから」って意識し過ぎていると思うんですよ。確かに言葉は違うけど、僕はまったく気にしてなくて。でも、「日本人か海外の人か」ってみんなが言い過ぎるから、その同調圧力に若干負けてしまって(笑)、「海外の人は海外の人」って思わないといけないのかなって。
フランク そんな必要はありません。その証拠に、僕の妻のタカコ(女優の和央ようかさん)も日本人だしね(笑)。素晴らしい才能の持ち主で、なおかつ美しい。タカコは僕のミューズです。今年はこの『ケイン&アベル』を始め、日本でミュージカルの仕事が6本控えているけれど、これだけ多くの仕事に情熱的に取り組むことができるのも、彼女がそばにいてくれるおかげです。