何度も観ても楽しい舞台
――今回、囲碁の世界でプロを目指しながら、夢を絶たれて、商社という全く違う世界に飛び込む新米サラリーマンの役ですが、どなたか、参考にしたサラリーマン像のようなものはありますか?
同じく俳優を志して、辞めて一般企業に入った仲間や、ちょうど入ってきた新入社員のマネージャーさんなどですかね。いろいろ話を聞いたりもしました。今回僕、稽古の時から、自前のスーツで入っているんですよ。演出のルピナさんもそのほうが世界をイメージしやすいんじゃないかと思って。普段、映像の仕事って、私服で現場に行くし、入りの時間もまちまちなのですが、今回の稽古はシャツにネクタイで、しかもきまった時間に現場に行く生活なので、ほんとのサラリーマンの「出勤」気分いうか…。たまにそのまま飲みに行ったりすると「面接行くの?就活してんの?役者やめるのか?」とか聞かれたりして。(笑)
――今日も自然に、ものすごく新人サラリーマンに見えています。髪型も、韓国の原作を意識されていますか?
はい、それはもちろん! 10年前の韓国のイメージでと言われて、こんな髪型にしています。原作の漫画はスネ夫っぽい髪型なんですけど。
――セリフや中身が重くても、楽曲が明るくていいというファンの方のコメントもありました。
もともと、チャン・グレは後ろ向きな考えを前向きにする天才で、それが楽曲にも反映されていると思います。彼は囲碁の世界にいた時に身に付けた武器しかない。でも、普通の人以上に人生に向き合ってきたと思うんですよね。自身の持つ強みで、サラリーマンとして状況を打破していく。囲碁って制限時間打たなければいけないわけで、その時間内に判断し、わずかな情報をもとにどんな状況でも前を向いて進まなければいけない。退路を断った状態にいる人だからこそスキルを積んでいい結果を出せたんだと思います。
――今回、客席も巻き込んでの演出もあるということですが。
今回、パンツと靴下を我々インターンが販売する場面があって、演出上、下着をつるしたロープを両側で持って、お客さんの上を通り抜けるんですよ。皆さんお芝居を観に来る時って、ある意味おしゃれをして来られてるでしょうし、髪型なども整えていると思うので、最初、絶対、頭に下着が当たっちゃいけないと思って腕を思いっきり上げてたんですけど、お客さんが手を出して触ってくるんですよ。だんだんそれが目安になってくるっていうか、手ごたえのあった日は手がめちゃくちゃ上がるんです。僕らの自信にもつながるんですよね。
――これから東京公演を観るファンの方に、メッセージをいただければ。
ルピナさんも、この作品については、あまり固めていないというか、キャストに任せてくれている部分も結構あるんですよ。これはミュージカルとしては珍しいんじゃないかなと。ルピナさんは、みんなが最善を尽くせる空気を作る天才だと思っていて。常に崩れているのにいつの間にか城が建っている…ような。その日その日で俳優が場面を作っているので、そういったエンタメ性を楽しんでもらいたいです。あと、僕はあまりアドリブはないんですけど、結構ある人もいて…。しっかり変えている人とか、その日によっても違っていて、そこも楽しんでもらいたいですね。
――何度も観ても楽しい舞台、ということですね。
そうだと思います!そしてとにかく、キャストのキャラクターが役にハマっている。それは奇跡だと思うし、すごくラッキーなことなんですよね。そんなツイてる人たちが集まっているので、観た方も運気があがるような、新年にふさわしい作品だと思います。
新作ミュージカル『ミセン』
名立たるドラマ賞を総なめした感動のヒューマンドラマが日韓トップクリエイターによってミュージカル化。
耳に残る音楽とダンスが融合し、心温まる新たなミュージカルが誕生。
韓国のウェブコミック・WEBTOON(ウェブトゥーン)発の大ヒット漫画『ミセン』。2014年度には韓国の名だたるドラマ賞を総なめにし、「ミセンシンドローム」と呼ばれるほどの社会現象を起こした大ヒット作は、日本では2016年よりピッコマにて連載され、同年、フジテレビでもリメイクドラマが放送されるほどの人気作。そんな国境を越えたヒット作が、日韓のトップクリエイター陣の手によってミュージカル化され初演の幕が開いた。脚本のパク・へリムによって豊かな人間ドラマが描かれ、チェ・ジョンユンによる耳に残る音楽、オ・ルピナによる現実と想像を超える演出、さらに、KAORIaliveによる物語に寄り添いながらも目が足りなくなる程のダンスが融合し、ミュージカルだからこそ観ることのできる、これまでにない、大人の心にリアルに刺さる作品が誕生。
囲碁のプロ棋士になる夢が絶たれ商社のインターンとして働くことになる主人公のチャン・グレ役を演じるのは前田公輝。グレが所属することになる営業3課のオ・サンシク課長に橋本じゅん、グレの母親とワーキングマザーでありオ課長の同期ソン・ジヨンの一人二役に安蘭けい、グレの同期インターン社員に清水くるみ(アン・ヨンイ役)、内海啓貴(ハン・ソギュル役)、糸川耀士郎(チャン・ベッキ役)ほか、石川禅、中井智彦、あべこうじ、東山光明など、魅力的な俳優陣が物語を彩る。
期間
2025年2月6日(木)~2月11日(火祝)
会場
上演時間
1幕:60分/休憩:20分/2幕:70分 (計2時間30分)予定
各公演回ごとの上演時間詳細>>
タイトルの「ミセン」とは囲碁用語で、漢字では「未生」となる。「死に石」に見えても、まだ完全な「死に石」ではなく、どちらにも転ぶことのできる可能性を秘めた石のことを言う。本作を通し、人生は自分の選択次第であらゆる道に進むことができる。「自分らしく生きる」人生のヒントが詰まった本作は、現代社会を生き抜く全ての人への人間賛歌となる。劇場を後にするとき、きっとあなたの明日が少し輝くものになる。