「年齢とともに手放すものがあってもいいのだと諦めることができるようになったのは、いいことだなって思います」(撮影:初沢亜利)
新型コロナウィルスの自粛要請で、本日千秋楽を迎えることになった『サンセット大通り』。主演(W主演)の安蘭けいさんにとっては、3度目の再演になる。4度目の受験で宝塚音楽学校に入学、首席で卒業するも、トップになるまで15年という長い道のりだった安蘭さん。不屈の精神はどのように育まれたのか? 宝塚歌劇団を卒業、女優として歩み始めて10年今、聞いた。(構成=内山靖子 撮影=初沢亜利)

「もっと世の中のために」と思える年齢に

まもなく芸能生活30周年を迎える節目として、2019年6月に祖国の韓国でチャリティーコンサートを開きました。覚えていらっしゃる方も多いでしょうが、2001年に、東京・新大久保駅のホームから転落した日本人を助けようとして、韓国からの留学生、イ・スヒョンさんが亡くなりました。そのスヒョンさんの遺志を継いで設立された奨学会にチャリティーの収益金を贈って、韓国をはじめ、アジア諸国から日本に語学留学に来ている若い奨学生の方々を少しでも支援したいと考えたのです。

自分が韓国籍であることの意味と言いますか、「日本と韓国の架け橋として、私だからできることがあるんじゃないか」という思いは以前からずっと抱いていました。「お前なら、絶対できるはず」と、亡くなった在日二世の父にも常々言われていましたし。でも、いったいどうすれば自分が“架け橋”になれるのか、具体的な方法がなかなか見つからなくて……。

その思いが、念願かなって実現したのは、この奨学会との出会いがあったことに加え、私自身の年齢が関係しているのかもしれません。人生は、もちろん自分のためのものですが、「人のために、自分の仕事を役立てたい」という思いが、ここ数年、とみに強くなってきて。自分自身のことだけじゃなく、もっと周りを見なきゃいけない、世の中にも貢献したい、と思うようになってきたのです。

年齢を重ねたことで、女優としての意識も変わってきましたね。宝塚を退団した10年前は、まだまだ夢見る夢子ちゃん気分で(笑)、「清純なヒロイン役が来たら、どうしよう?」なんて能天気に構えていたことも。

でも、もはや今の私には、『ファントム』のクリスティーヌのような若くて未来を見つめているヒロイン役は絶対に来ない。そんな現実も受け入れられるようになり、今の自分にオファーがあるならこういう役だなということも自ずとわかってきました。

もちろん、常に見られている仕事ですから、いつまでもきれいでいたいとは思っています。そのために、週に2回は筋トレに通い、女性らしいしなやかなボディラインを保つためのトレーニングを。冷えを防ぐために、足首を常に温めるようにしたりもしています。

でも、シワが1本できたからといって、もはや「消さなきゃ!」とは焦らない。「シワができたなら、できたなりにきれいでいよう」って。正直な話、トシをとってよかったと感じることはひとつもないけれど(笑)、無理に年齢に抗う必要はない。年齢とともに手放すものがあってもいいのだと諦めることができるようになったのは、いいことだなって思います。