「穏やかな波が続くと退屈になっちゃって、自分を痛めつけたくなってくる。天国と地獄を行き来していないと、生きている感じがしない(笑)」

宝塚に入団してから、15年間トップになれなかったときもそうですね。ずっと二番手に甘んじていたので、「もうやめよう」と思ったことも何回もありました。あるとき、今度こそやめようと思って、当時、親しくしていた下級生をご飯に誘い、その場で打ち明けようとしたんです。

なのに、「実は私、次でやめるんです」って彼女のほうから先に切り出されてしまって。しかも、やめるという彼女の決意の固さが私よりはるかに上だった。それに比べたら、こんな生半可な思いで自分がやめることはできないと、それで思いとどまることにしたんです。

でも、そこでまた私の負けず嫌いな性格が頭をもたげて、「トップになれないなら、劇団にとって値打ちのある役者になろう」「『こういう役を安蘭にやらせたい』と劇団が思うような役者になってやろう」と、トップを目指すことを一度諦めて、自分の中でシフトを変えたんです。そうしたら、なぜかトップ就任の話がやってきて。不思議ですよねぇ。

振り返ってみると、何に対しても自分の思いがあまりにも強すぎるのかもしれません。車で言えば、常にトップギアに入れてグワーッと突っ走っているので、もう少しニュートラルでいればいいのかなって。

ただ、この年齢になったことで、少し大人の余裕が生まれたといいますか。以前は、良くも悪くも大波が次々と押し寄せる日々だったのが、このところ穏やかなさざ波になってきている。ただ、時折、そういう自分が自分じゃないような気もするんですよ。

穏やかな波が続くと退屈になっちゃって、自分を痛めつけたくなってくる。天国と地獄を行き来していないと、生きている感じがしない(笑)。占いによれば、私には波瀾の星がついているそうなので、常に新しいことにチャレンジしたいと思うのは仕方ないことなのかもしれません。