家族は裏切らない存在

私が俳優と舞踊家という二足の草鞋を履けるのは、家族の存在と祖母の代から支えてきてくださった門弟の皆さんのおかげだと思っています。特に家を共に守ってくれている兄の存在には本当に感謝しています。2021年、私が26歳の時に“藤間紫”を、2つ上の兄は“藤間翔”を襲名して、日本舞踊の家元を継ぐことになりました。最初の頃は、どこかライバル関係というか、ぶつかることもあったんです。でもいつの間にかお互いの足りないところを補い合えるようになりました。今となっては心から頼れる存在ですし、甘えられる相手でもあります。

よく、「仲が良いごきょうだいですね」といわれるのですが、毎日顔を合わせている日々を「仲が良い」という言葉で言い表せるのかどうなのか…とにかく助け合って生きています。

私の心の支えになってくれているのは母です。母(俳優・島村佳江)は、俳優をしていたこともあって、舞台、映画、エンターテイメント全般が大好きで、いつもあらゆるジャンルのものに足を運んでいる観客として最高の人。私に気を遣ってお世辞をいうことはないので、時には痛いところもついてきますし、母に褒められたら褒められたで嬉しい。舞台は必ず初日に観に来ていろんな感想を言ってくれます。

私が母に、「この作品よかったよ」と伝えれば母はすぐに観にいくし、私も母が勧めてくれた作品はおさえるようにしています。とにかく昔から幅広く観ている人なので私も信頼できる“情報筋”として母の言葉をあてにしています。母は舞踊家の家に嫁いだ身で、舞踊家ではないのですが、舞踊に関してもそんな母の評価に耳を傾けてしまうのです。

一方父は、私の作品を見ても感想をほとんど言いません。でも実は陰で母に「次の作品はなんなの?」と尋ねては、他所の方に宣伝していたりすると聞いています。「実はお父さんが一番楽しみにしているんじゃない?」と母からは言われているので、ありがたいですね。