女にやさしさを感じるとき

悠木 最近、人のやさしさについてときどき考えるんだけど、女にやさしさを感じるときって、どんなとき。

『人生、上出来 増補版 心底惚れた』(著:樹木希林/中央公論新社)

勘九郎 そうですね、どういうときかな。自分が間違えたことをしているとわかっているでしょう。それでも押し通そうとしているときに、それは違うといわれたとき。とても、ああ、すごくやさしいなと思うんですね。間違えているときにいい顔して「そうね」ってあいづち打たれると、ひねくれているから。

悠木 でも、あとで傷つくものね、それが間違っていたと知ったときにね。

勘九郎 そのときはカチンとくるけれども、よく考えてみるとやっぱりやさしいなと思うんですよね。だから、芝居でも、けなされると、何か信じられるみたいな。それはまたちょっと考えすぎかもしれないけれども。

悠木 まあ、ほんとのことを言ってくれる人が。

勘九郎 ……人がいちばん自分を好きになってくれているような気がするわけですよね。

悠木 それは人のやさしさで、女というふうに特別感じたことはない? ああ、これは女のやさしさだなというふうに。

勘九郎 そうですね、何でもやさしいと思っちゃうから、フフフフ。