そう思うようになったのは、2012年に頸動脈狭窄症になって手術したことがきっかけでした。手術では首の血管や筋肉を切るからやっぱり心配で、手術が終わって目が覚めたときは、手が動くか、声が出るか、確認した。「あいうえおかきくけこ。よし出るな」。
ところが、歌ってみると高音が出ない。退院後には『ミス・サイゴン』の舞台が控えている。ミュージカル人生、もう終わったな……と思ったよ。
でもそのときにBilly 先生の顔が脳裏に浮かんで、レッスンをお願いしたら出るようになったの。それまではある意味、正しくない発声法でも声が出せていたのが、声が出なくなったおかげで正しい発声法を身につけることができた。
正しく筋肉が鍛えられたので、むしろ手術前よりも音域が広がったくらい。身体って、日々のトレーニングの積み重ねで変わっていくんだね。
そういえば、『オペラ座の怪人』に出ていたときは、胸郭が広がって、それまでの背広が着られなくなったことがあった。稽古から千秋楽までの半年間、ものすごく息を吸い込んで声を伸ばす歌い方を続けているうちに、体格が変わってしまったんだね。
浅利(慶太)さんにも言われたよ、「お前、胸板厚くなったな」って。今もその厚みはキープしてますよ。