『ピサロ』

将軍と王、信念の異なる二人が対峙する

建て替えに伴い休業中だった渋谷のPARCO劇場が、1月24日、3年半ぶりに再オープンした。1973年に「西武劇場」として開場以来、名だたる俳優・女優や演出家とともに名作を世に送り出してきた同劇場。458席だった座席数を636席に増やし、舞台空間も拡張した。すでに2021年5月までの14作品を発表済みで、並々ならぬ意気込みがうかがえる。

1月下旬から2月は、こけら落とし公演として『志の輔らくご』と『ラヴ・レターズ』を上演。その後、3月に迎えるグランドオープン第1弾となるのが、渡辺謙が主役を務める『ピサロ』だ。1985年に山崎努(崎はたつざき)の主演、渡辺も出演していた伝説の舞台が、ついによみがえる。

小貴族の家に生まれ、教育も十分に受けずに育ったピサロ(渡辺)は、軍人として成り上がった末にスペイン将軍としてインカ帝国征服へと向かう。2400万人を従えるインカの王アタワルパ(宮沢氷魚)を捕らえたピサロだったが、次第に“太陽の子”アタワルパに心を開いてゆく。アタワルパもまた、ピサロを信頼し始めるが……。

異なる国の文化、宗教、概念を巡って歴史上で繰り返されてきた衝突を、二人の男の姿を通して描く本作。初演でアタワルパを演じた渡辺は、ピサロ役の山崎に一歩も譲らない演技でその名を世に知らしめることとなった。

今回は主人公のピサロに渡辺が、そしてかつて渡辺が演じたアタワルパに若手俳優の宮沢が決定。PARCO劇場は自分にとって俳優人生のエポックな場所だと語る渡辺と、184センチの恵まれた身体と静謐な佇まいで独特の存在感を放つ宮沢の二人が、どう火花を散らすのかが見ものだ。

演出を務めるのは、英国の名門ロイヤル・バレエ団で活躍後、振付家・演出家として14年にローレンス・オリヴィエ賞ベスト・エンターテインメント賞も受賞しているウィル・タケット。昨年の『良い子はみんなご褒美がもらえる』では、バレエ、オペラ、ミュージカル、演劇という舞台芸術を駆使した演出で手腕を発揮し、好評を得た。

ご存じの通り、渡辺は海外の映画や舞台で活躍中。世界基準の舞台を新しく生まれ変わった劇場で観られる喜びを、本作で存分に堪能したい。

PARCO劇場オープニング・シリーズ 第1弾
ピサロ


3月13日~4月20日/東京・PARCO劇場
作/ピーター・シェーファー 翻訳/伊丹十三
演出/ウィル・タケット
出演/渡辺謙、宮沢氷魚、栗原英雄、和田正人、大鶴佐助、首藤康之、小柳友、長谷川初範ほか
TEL 03・3477・5858(パルコステージ)

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『脳内ポイズンベリー』

「さあ! 脳内会議を始めよう」

大ヒットコミック『失恋ショコラティエ』の水城せとな原作による新感覚ラブコメディが、待望の舞台化。「さあ! 脳内会議を始めよう」と〈議長〉吉田の声が響くと、〈ネガティブ思考〉の池田や〈ポジティブ思考〉の石橋、〈瞬間の感情〉のハトコ、〈記憶〉担当の岸が集まってくる。

この5人、実はアラサー女子・いちこの脳内で意見を戦わせる“思考”が擬人化されたもの。2人の男性の間で揺れ動くいちこの脳内で、メンバーたちは本当の幸せを導き出すことができるのか……?

肩の凝らないエンタメだからこそ、市原隼人や蓮佛美沙子ら実力派役者陣の出演が嬉しい。右往左往するいちこの姿に我が身を重ねて笑ったら、いつのまにか元気をもらえそうだ。

脳内ポイズンベリー

3月14~29日/東京・新国立劇場 中劇場
原作/水城せとな(集英社クイーンズコミックス) 演出/佐藤祐市
出演/市原隼人、蓮佛美沙子、
早霧せいな、グァンス(SUPERNOVA)、本髙克樹(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)、斉藤優里、白石隼也、渡辺碧斗、河西智美
TEL 0570・00・3337(サンライズプロモーション東京)

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『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド』

イエス・キリストの生まれ変わりを演じる脱獄囚

1959年のアメリカ、ルイジアナ。命からがら脱獄し、とある納屋に身を隠した男は、少女スワローと出会う。男をイエス・キリストの生まれ変わりと信じ、「死んだお母さんに会いたい」と言うスワロー。男は本当のことを打ち明けられず、キリストとして過ごすことになるが……。

『キャッツ』『オペラ座の怪人』などで知られるブロードウェイの巨匠、アンドリュー・ロイド= ウェバーによって1996年に初演されたミュージカル。

日本初演となる今回は、ドラマや映画だけでなくミュージカルでも目覚ましい活躍を見せる三浦春馬が男(ザ・マン)役に挑戦。スワロー役は、こちらも昨年第44回菊田一夫演劇賞を受賞、稀有な輝きを放つ生田絵梨花が務める。

ミュージカル
ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~


3月7~29日/東京・日生劇場
脚本・作曲・オーケストレーション/アンドリュー・ロイド= ウェバー
作詞/ジム・スタインマン 脚本/パトリシア・ノップ
オーケストレーション/デヴィッド・カレン 演出/白井晃
出演/三浦春馬、生田絵梨花(乃木坂46)ほか
TEL 03・3213・7221(帝国劇場内日生公演係) ※富山・福岡・愛知・大阪公演あり