放射線療法を拒否

「めまいとふらつきで倒れたけど、いまのところ意識はある。生命予後を保つというよりはQOL(生活の質)のために脳への放射線療法を勧めたんやけど

……お母さん、いつものことながら拒否ってて、このまま今日中に退院することになる感じやわ」

『母の旅立ち』(著:尾崎英子/ CEメディアハウス)

ようこ姉はいつものことながら淡々と説明する。

お母さん、また拒否ってるんか……。

「すぐに駆けつけたいけど、わたし、いまシンガポールにおってさ」

「えっ? この電話シンガポールにかけてるってこと! ちょっ! 早よ言いや! 電話代!」

通話が一方的に切られた。

たしかに電話代な。

でもこの話の流れで言うタイミングなんてあった?