元気そうだったのに
ここからは一気に進んでしまうのだろうか。
この時点で、わたしにはまだ何も読めていなかった。
シンガポールにいたのは所用があってのことで、わたしは息子2人と訪れていた。母のことがあったので、日本を離れるのに不安がなくもなかった。
とはいえ、母はそれなりに元気そうだったし、息子たちにとって楽しい予定であったので思い切ってやって来たのだった。
こういう状況において、予定を組むのは難しいものだ。
その電話をもらった時、わたしはチャイナタウンを観光していた。仏牙寺龍華院という寺院と博物館の複合施設に巨大な摩尼車がある。ご利益があるというので、母の快癒を祈った直後だった。お母さんの病気が治りますように、と。
快癒どころか脳転移かい!
たいそうなご利益である。
だがじつのところ、祈りに身が入らないような気持ちでもあった。